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バティモン5 望まれざる者のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
3.7
【絞り出される移民像としての団地の狭い空間】
フランスの団地映画ことバンリュー映画もとある変化が起きている気がする。『GAGARINE/ガガーリン』と本作を観ると、パリ郊外の団地が老朽化を迎えており解体が行われている。それを軸にフランス社会を捉えようとしている気がする。実際にフランス映画において、パリにいるはずである移民が漂白されており、バンリュー映画に押し込められているイメージが強い。そんな中、フランスに居座る移民を排除しようと行政の手が及んでいるのでは?ラジ・リ監督のQ&Aによれば、バンリューに住む高齢者移民は、来たくて来たわけでない人も少なくなく一定層フランス語を覚えようとしない方がいる。それを若い女性の移民が支えていたりするとのこと。そして、横浜フランス映画祭2024会場に来ていたクレール・ドゥニ監督の補足によれば、移民でもウクライナやシリアの移民には手厚いが、それ以外には冷たいフランス社会像が存在するとのこと。

閑話休題、フランス映画では漂白されてなかなか観ることのできない人種のサラダボウルの実態を描いた『バティモン5 望まれざる者』について語っていく。

『レ・ミゼラブル』でフランス団地における狭い階段を『七人の侍』における狭い場所へ誘い込むアクションへ置換したラジ・リ監督。今回は、それをさらに発展させていく。冒頭、立ち退きが言い渡された市民たちが棺桶を持って降りる。落とすか落とさないかの緊迫感の中、絞り出されるように外へと追い出され、団地が爆破される。だが、爆破は失敗に終わり、市長が死亡する。臨時市長の尻拭いをさせられる黒人の副市長、そして団地の移民をケアするアビーの目線から、政略で混沌とするフランス社会が見えてくる。

映画は執拗に、エレベーターすらない狭い階段での登り降りを強調する。移民は来たくてフランスに来たわけでなかったりする。そんな彼ら/彼女らの居ざる得ない居場所として団地が存在するのだが、なんとかして立ち退かせたい臨時市長のピエールの策略によって、追い出される。まるでチューブから絞り出すように狭い階段をつたって降りていく様子。バンリュー映画は少なくないが、この狭さに着目して、閉塞感を捉えていくラジ・リ監督の探究心に惹き込まれたのであった。

P.S.ところで、今年の横浜フランス映画祭はかなり酷い。突然、スクリーンが変更となり、勝手に座席が変えられるのはもちろん、前日に送られてきたメールが座席変更前のものという事態。しかも、チケット確認はQRコードつきチケットにもかかわらず目視なので、会場では変更前のチケット番号とバッティングしたり、ダブルブッキングが発生する異常事態が発生していた。そのくせ、映画が終わると爆速で「いかがでしたか?」メールが送られてくるのだが、なぜかスーパーチャットができる失笑不可避システムで草生えまくりだったのだ。ゲストがドタキャンするケースが多いのは、こうした杜撰さゆえに来賓にナメられているからなのではと思ってしまった。
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