千年女優

バティモン5 望まれざる者の千年女優のレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
3.5
労働者階級の移民家族が暮らすパリ郊外の一角パティモン5。移民向けのケアスタッフとして働くマリにルーツを持つ女性で、窮屈な団地で亡くなった祖母を弔うアビー。新たに市長に就任したピエールの再開発に伴う立ち退きに反対する彼女が、政策強硬に伴って緊張が高まるエリアで起こった抗争に巻き込まれる様を描いたドラマ映画です。

自身もマリ系の移民で過酷な生活を送った経験のあるラジ・リが、アカデミー賞で国際長編映画化賞にノミネートされるなど高く評価された『レ・ミゼラブル』に続いて制作した二作目の長編映画で、2023年の9月にトロント国際映画祭で公開されると同年6月に起こった少年ナヘル・メルズーク射殺事件に伴う暴動と相まって注目をされました。

前作同様に自身の移民としての怒りを表現する物語で、虐げられる鬱憤が溜まっていく様を描きます。少年達の反抗を異なる視点から描いて奥行きをもたらした前作と比べて主人公と主体が同じなためにやや一方的な印象を抱かせるところはありますが、中流階級以上が平穏のために疎外を選ぶことで起こる「分断」を捉えようとする一作です。
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