東朴幕院

バティモン5 望まれざる者の東朴幕院のレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
4.1
2020年の私的ベスト作品であった『ラ・ミゼラブル』からのラジ・リ監督の最新作という事でずっと気になっていた。

テーマは前作に続きフランスのマイノリティへの社会的な弾圧が描かれている。

本作は、市長の急逝により暫定市長を引き受けたものの、微妙なバランスで成り立っていた難民やその2世が住むスラム街への行政の対応が彼らを弾圧し、やがて弾圧に対するしっぺ返しに合うというもの。

暫定市長になった小児科医師も悪い人間では無く、行政の規制を遵守する事で社会が安定すると信じているもの。
一方で役所で働くハビーはスラム街に住むが暴力では何も解決しないと信じているリベラルな人間であるが団地立退の件など不満は多い。
それぞれの主張は真っ当であったが、権力を持つ市長が少しもスラム街の住民を思う事が出来ずに強制執行する事で大ごとになってしまう…。

この対立軸に何も解決らしきものは見られないが、クライマックス後のハビーのあの振る舞いは、声をあげて行政を変えていくのだと強い決意を感じる事が出来たのが、ほんの少しだが希望が残る終わり方も前作の破壊的なそれと異なり絶妙な味付けだったと思う。

アジ・リ監督の社会システムへのやり場の無い怒りをもどかしくも描写する姿勢は、また新作が楽しみになってしまうよね。
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