よねっきー

リンダはチキンがたべたい!のよねっきーのレビュー・感想・評価

4.8
喪失への哀しみを原動力に展開されるドタバタ劇が痛快! 生きたニワトリの争奪戦に、子供も大人も、犬も警察も本気になる。

アニメの嘘を上手く使った絵作りも多くありつつ、映画的な細部が輝く。制服を剥がされた途端に萎縮する警官とか、ストライキ中の町で「腹減った!」とデモ行進する子供たちとか、非常に上手い。

不在の父親に代わる存在が、劇中では「緑の指輪」と「生きたニワトリ」なわけだけど、マクガフィンを無生物と生物で2つ用意するこの手口も見事だと思った。指輪が夫婦や親子の関係性から新たな出会いまでを示す「象徴」としての役目に徹する一方で、ニワトリはデタラメに活劇を引っ張っていく。つまり父親の影には、後ろ向きな部分と前向きな部分が同居している。なんか、死んだ人ってそんな感じだよな、とか思った。

最後の一曲も泣けたなあ。光を意識したアニメ映像と音の合わせ方が抜群だし、コーラス隊が娘の友達ってのにグッとくるし。死んだ人は暗闇にいるのかもしれないけど、おれらが友達と楽しくやってれば、ときどきその夜が明けたりするんじゃないだろうか。

高速道路の光の描き方が、子どもの頃に後部座席で見ていたそのまんまで、忘れがたく美しかった。
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