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ロボット・ドリームズのcyphのレビュー・感想・評価

ロボット・ドリームズ(2023年製作の映画)
4.1
なんかよさそうって思ったその夜に好きな人間と近所の映画館に観に行けてまるっとよかった シンプルすぎるロボットとシンプルすぎる犬とが踊ってるだけでこんなにも直接こころを揺さぶられて顔がびしょびしょになる 自分の中の善性を撫でて叩いてここにあるよって確かめてくれたみたいで帰り道ぽわぽわになった

明日ロボットがくるな〜の顔でベッドに横になる犬と、ロボットの脚とプリクラを握って感情ぐちゃぐちゃの顔(って伝わるようになるのすごい)でベッドに横になる犬との対比よ ひとりで帰ってきてしまった部屋の暗さ、つけてないテレビに映り込む自分の顔、そういうディテールがめちゃんこよかった こっちは部屋のポスター見た瞬間から犬のことが大好きになってるというのによ 犬が修理道具ボックスを少し重たそうに手に取るたびに心臓がぎゅってなる

全員そう言うんだから言わんでいいんだけどラストよかったですね ライフゴーズオン 元カレ元カノものってそれだけでほんとうに、ほんとうに、人生!ってなるけどそれをこんな純度100%で差し出してくれてありがとう ロボットズフェイバリットってカセットをつくってもらってるところにもばかほど泣く こんなん全員そう言うんだから言わんでいいんだけどラスカルがいいやつでよかったよね 一瞬でラスカルズフェイバリットに切り替えられたのなんで?あれは夢じゃないよね?って帰り道聞いたら80年代のでかいカセットデッキってカセット2個入れられるんだよって教えてもらって年の功 ありがとうともなった

スキー場でアリクイカップルに意地悪されたりボーリングで友だちの友だちに無視されたり完全に善なる世界なわけではないのだけど、それでもこう世界全体に悪が充満してはないかんじの 静かに希望に満ちてるあの感覚もかつてあるいはどこかにはあったかもしれないニューヨークの9月ってかんじしてそれも静かによかった 別に全員いいやつでなくても、一生一緒にいられなくても、ここでなら前を向いて生きていける、そんな世界

追記
なんとなく観てる間は人種差別的なものが存在しない世界ってファンタジーとして受け取ってたけど(もちろんはっきりそう言語化してたわけじゃないけど) いま思い返すと生殖って概念自体もかなり薄そうな世界だったな ロボットと手を繋いで歩くことやチキンとキャットが同居することになんら後ろ暗さを感じる必要のない世界 生産性とかいう謎の棍棒で知らん人間から襲われる心配なく、ただ純粋に他者を求めることができるユートピア それはほんとうにほんとうに羨ましい さみしさは誰かと出会うためのサーチライトで、わたしたちは生殖のために生きてるわけじゃない ほんまそれ大賞ですありがとう
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