台詞なしで102分を飽きずに見ていられる程、エモーショナルでアニメならではの映像的体験があった。監督がいた80年代のニューヨークってこんなだったんだというノスタルジーにも浸れた。日本のアニメにはない海外の独特のタッチを楽しむのも鑑賞ポイントかな。
普遍性のあるストーリーとEarth,wind&fire の代表曲“September ”の力の化学反応がここまでの評価に繋がっていると思う。
製作陣はEarth,wind&fireに感謝状を送るかいくらか支払うべき。このバンドは本当に名曲ぞろいなんで、知らない人はこの機会に是非検索を。
ドッグとロボットの性別を明示しないことで普通の友情、異性愛、同性愛とも取れるようにしていることで幅広く受け入れてもらえる効果がある。
ドッグも背景が分からないことで、色んな人が自分に当てはめられるのも別に良い。「タクシードライバー」もそういう手法を取ってる。にしても、描かれなさ過ぎじゃない?せめて仕事は何しているのかくらいは描いてもいいと思った。その方が物語に深みが増すでしょう。性別が把握出来ちゃうからダメなのかな…。
あとロボットが何で動いているのか分からない。充電式なのかバッテリーを交換するのか、どうでも良くはないと思う。改造されてからは電池で動く描写があるのに。
擬人化された動物達も生息地を考えると、あれは白人で、あれが黒人だな、あれはラテン系、中国系だなと当てはめられるのは面白い。それ以上の意味を持たせてないのも良い判断だと思う。
中盤から映画のタイトルの意味が分かってくる。ロボットが夢を見ながら色んな目に遇う中で現実の残酷さ、悲しさなどを知る。ドッグも挫折し、傷つきながら出会いと別れを経験して折り合いをつけていく。そこを誤魔化さずきちんと描いている。
あのときああなっていたら、今頃…。誰でもそんなタラレバ話を考えたことがある。“たとえ相手が変わっても君と過ごしたことあの時を忘れない”、そこから流れる“September”。
確かにこれは泣く人が続出するのも分かる切なくて感動のラスト。
ただ欲を言わせてもらうならドッグはロボットじゃない相手を見つけてほしかった。見る人によっては結局振り出しに戻ったように見えるかも。
良い映画なのは間違いない。2024年を代表する作品だろうけど、自分は手放しで褒められなかった。
もっと普遍的なことを描いていて、共感出来てツッコミ所がなく、大きな感動をもたらすという意味では「ホールドオーバーズ」の方が上かなと思ってしまった。あっちは曲に頼ることもしてないし、ジャンル的派手さも求めていないから。