IPS細胞でノーベル賞を受賞された山中伸弥教授が、近畿大学の入学式のスピーチで「人間万事塞翁が馬」という言葉の話をされている。
「幸運だと思うことも不幸につながるし、不幸だと思うことも幸運につながることがある。」という意味なのだが、山中先生の人生をなぞりながら話をされていて大変感動し、それ以来、座右の銘にしている。
本作は、第二次戦時中、プラハに在中していたがユダヤ人の699人の子供たちをイギリスに避難させたニコラス・ウィンストンの実話を描いている。
シンドラーのリストと似たようなストーリーを予想して「なんで今さら映画化?」と思いながら観ていたが、最後まで観るとその理由が分かる。
その最後というのは、疎開を助けた子供たちと、50年の時を経てBBCの番組で再会すること。
詳細な言及は避けるがその再会のシーンは本当に感動的だ。
途中からなんとなく結末を予想したくなる展開になるのだが、実話ベースと前情報を持っていたので「さすがにそこまでにはならないかな?」という予想が現実になる。自分で否定した予想が現実になることが、予想を超える感動を増幅させる。
その後、再会した当時の子供たちはニコラス・ウィンストンを父と呼び、106歳で亡くなるまで交流を続けたというくくりで本作は幕を閉じる。
ハッピーエンドのように思えるのだが、疎開した子供たちは、プラハに残してきた親兄弟をホロコーストで亡くした人が大部分だったはず。
それに、疎開先でも親と離れ里親の元、慣れないイギリスで育ったのだ。
きっと私が想像できない苦労があったと思うのだが、ハッピーエンドという理解でよいのだろうか?
ここまできて「人間万事塞翁が馬」を思い出した。
今の伴侶や子供と出会い、最後にニコラス・ウィンストンという素晴らしい人とも再会できたのは、プラハからの避難という不幸な出来事から繋がっている。
彼らの疎開の苦労、肉親と離れる悲しみを切り取ると断じて幸福とは言えないと思うが、イギリスで新しい家族ができて最後のニコラス・ウィンストンと晩年を過ごすことができた幸福につながった「人間万事塞翁が馬」なのだと強く信じたい。
ちなみに、山中先生の動画はYouTubeで観れますので、ご興味がある方は是非ご覧になって下さい。