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違う惑星の変な恋人のnetfilmsのレビュー・感想・評価

違う惑星の変な恋人(2023年製作の映画)
4.3
 観始めて早々、深夜のTV TOKYOドラマのクオリティだと思ったのだがかなり面白い。これも一つの脚本の映画ということで、真っ先に思い出したのが2年前の小林啓一の『恋は光』であり、大根仁の『モテキ』だろう。同じ美容室で働くむっちゃん(莉子)とグリコ(筧美和子)は、美意識の高い美容師同士だから、ある程度のファッションや髪型で感覚的に合う合わないはあるはずだが、ツボにハマるバンドが共通だったことがきっかけでソウルメイトになる。最初のこの描写の2人の距離の縮め方のバグ味が凄い。明らかに周波数は違うのだが、不思議と音楽の趣味は合うあの特別な感覚。そこから2人はグリコのかつての元カレ2名をシェアするのだが、偶然にも男と女の化学反応が起こる。『恋は光』は1人のヒーローを巡る肉食系女子1名と草食系女子2名との恋愛模様だったが、こちらは女2人に男が2人。莉子と筧美和子とでは踏んで来た恋愛の場数も年齢も経験値も何もかもが違うはずで案の定、むっちゃんはバンドマンでブランキ―・ジェット・シティのボーカルと同じ名前のベンジー(中島歩)に恋をする。その一方でグリコにストーカー的な態度を取るモー(綱啓永)とも親しくなるのだ。

 グリコとベンジーをアラサー系だと仮定するならば、むっちゃんとモー君は恋愛のイロハすら知らない草食メンヘラ系で、まともな恋の駆け引きが出来ない拗らせ系20代である。だからこそ2人はモー君の趣味のボーリングで意気投合し、妄想を膨らますことで自分たちを励ます。その一方でいかにもアラサーのバンドマンという空気を醸し出すベンジーのクズっぷりが凄い。中島歩さんのどこまでが素で、どこからが芝居なのかはわからないが、あの天性の舌っ足らずな話しぶりから真正のダメ男感が伝わって来る。案の定、グリコもナカヤマシューコ(みらん)も彼の心底ダメっぷりに沼っている。ベンジーはベンジーで手当たり次第に体の関係を結ぶプレイボーイだがその後の対応は極めて優柔不断なのだが、あろうことか彼に恋するむっちゃんを抱いてしまったことで恋の鞘当ては絶望的な方向へ向かうというのが物語の骨子となる。予告編でも使われていたが、男女の距離感が微妙にバグったメンヘラ拗らせ系の4人が、それぞれ違うベクトルの話で盛り上がる場面こそが白眉で、35歳の木村聡志の脚本の妙味にスクリーンを見つめる私は釘付けになった。何気にサッカーあるあるが最初から用意周到に盛り込まれつつ、後半のあのタイミングでまさかロベルト・バッジョの話が出て来た時には木村聡志の脚本マジックに嵌められる。中盤、グリコの気の迷いを見透かしたかのように現れるカフェ店員を演じた坂ノ上茜の怪演ぶりも鮮烈な印象を残す。
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