このレビューはネタバレを含みます
「奇才ヘンリー・シュガーの物語 他3編」の2話目に収録されている短編として鑑賞。
全4作品の中でもっとも演劇的な演出が顕著だったと思う。
あと、シンプル一番に胸糞。
主人公の少年(ピーター)がいじめっ子2人に目をつけられるという話だけど、やっていることは普通に犯罪的。
縄で縛って列車が来る線路に寝かせるとか、持っていた銃をピーターに向かって発砲するとか、実際に白鳥を撃ち殺すとか。
大人になったピーターがナレーターとして淡々と話すから、かろうじてなんとか観られるな……というほどの胸糞具合。
しかも、特にざまあ的なことはない。
少年がいじめられるだけの話。
それがまたリアルで、大人になった彼が当時のことを淡々と話すのもどこか痛々しくて。
演出としてはうまいなあ、と思ってしまうわけです。
最後に、
(正確な言い回しは忘れたが)
忍耐の限界を超えても屈しない人がいる。それがピーターだ。
みたいなことを言っていたけど、「いいよいいよ、こんな酷いことする奴らからは逃げていいんだよ。それは屈すると違うよ」と思ってしまった。
たぶんこれは現代的な考えなんだろうね。
不屈の精神。
大人になって成功した人が過去を振り返れば、ある種美談になるのかもしれない。
こういうとき、どうしても「生存者バイアス」という言葉が思い浮かんでしまう……。
でもやっぱり、ウェス・アンダーソン監督らしい作品でした。