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エアのTenKasSのレビュー・感想・評価

エア(2023年製作の映画)
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どうしても想起してしまう固有名詞の印象とは違い、ポップな映画。撃墜されて脱出、降下したその先はスターリングラードの激戦の真っ只中で死屍累々の戦場を転げ回るっていう展開が特にそんな気持ちにさせる。
映像のルックや、フレームアウトするキスシーン、途上で終わる物事が連続する構成等々戦勝国の戦争映画的な態度を回避しようと色々やっているのだが…なんか普通に観客としては楽しく観てしまった。展開としても新兵として志願して、同期が死んでいって目が座り始め、終盤には若い新兵がやってきて…って『西部戦線異常なし』の頃から変わらないオーソドックスなもの。
そして古今東西飛行機に乗っているパイロットを捉えるカメラは画角は多少変わってもほぼ同じというのが一番印象的だった。戦争映画として楽しく観れてしまう一因かもしれない。
女性映画云々というのは割と薄い。味方からのバックラッシュ主体。
そもそも戦闘機に乗れば男だろうが女だろうが僚機か敵機になってしまうので片方の陣営しか描かないと、特にドラマにはならない。そして主人公もドイツ人のことを「クソ野郎」としか呼ばない。ジェンダー云々以前のところまで他者への想像力を後退させられるのが殺し合いだという感じもした。
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