みむさん

The Reeds(英題)のみむさんのレビュー・感想・評価

The Reeds(英題)(2023年製作の映画)
3.5
ヨーテボリ映画祭にて。

アナトリアが舞台のドラマ、虐げられた葦農夫の反乱。謙虚で善良な農民がギャング(のような権力者?)の圧力に屈して生活がじわじわ狂っていく話。静かなサスペンス。

単調な一日を繰り返す真面目な葦農夫アリは、持てる者持たざる者ねヒエラルキーに不満はあるものの粛々と仕事をするタイプのようだ。
不当で納得の行かない現実をどうにもできない無力さを感じながらしぶしぶ現状を受け入れていたのだろう。

抑圧された側ヒエラルキーの低位の我慢と無気力がその力関係の均衡を保っていたならば、それが何かに気づいて、もしくは何かの出来事がきっかけで関係に亀裂が入ったらどうなるのか。

説明や思わせ振りな台詞はなく、寡黙なアリの変化を描く。中盤以降は序盤の雰囲気からは想像しなかった静かなサスペンスになっていく。

アリのモラルとプライド、積み重なったイライラ、取り返しのつかない出来事、搾取。
混乱し苦悩しながら愛と自尊心を取り戻そうとするアリを見て、いいのかそれでと思うがそうなるしかないだろうと思うとなんとも言えない気分になった…。