千年女優

ありふれた教室の千年女優のレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
3.5
理想に燃える新任の中学校教師で、担当するクラスで連続盗難事件が起こって着任早々トラブルに見舞われるカーラ。強引な進め方でトルコ系生徒に冤罪を負わせてしまう同僚の有様を目の当たりにした彼女が、正義感の強さから隠しカメラを使った独自調査に臨むも良かれと思ってした行動が次々裏目に出てしまう様を描いたドラマ映画です。

トルコ系移民の子としてベルリンに生まれてイスタンブールでの学生時代を経て戻ったドイツで映画業を学んだイルケル・チャタクが、自身が目の当たりのした盗難事件に触発されて製作した2023年公開作品で、ベルリン国際映画祭で二部門を受賞するなど批評家からの絶賛を集めるとアカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされました。

学校現場におけるありふれた事件を通してがんじがらめになった「生き辛い」現代を描きます。主題のためとはいえ物語における主人公への仕打ちは意地の悪さを感じる所はありますが、なにがあっても「ひとつ」であるはずの「真実」へのアプローチが、「正しさ」の多様化に伴って細く険しいものになっている様を捉えようとする一作です。
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