ごんす

ありふれた教室のごんすのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.0
閉ざされた空間で飽きさせない見事な脚本だと思う。
非常に今日的な話だと思うし『ありふれた教室』という邦題も良いと思った。

主人公の視点で一番感情移入したのは証拠だと思ったシャツと同じシャツを着た人が沢山歩いているのを見かける脳内映像のようなシーン。
そりゃあ不安になるよなと思った。
あの職員達の雰囲気では仕方ないが単独で問い詰めるのはまずいし、確信を得るには証拠として完璧ではなかった。

彼女の正義感は世の中では生きづらい方向に作用してしまうことが多そう。
瞬時にパニック発作時の対処法を実行できていた場面など思い出すと過去にも自分の信念のせいで苦しい思いをしたのではないか、それとも何かしらの過去の出来事が彼女を変えたのかなどと考えてしまった。

学校の雰囲気が生々しくこの映画の先生と生徒を観て思い出した記憶がある(最近、昔のこと思い出しすぎて自分死ぬの?と思うことがある)
中学生の頃にクラスメイトがまわりに乗せられて女性の先生に失礼なことを言って怒らせたことを思い出した。
先生は本人にも凄い怒ったが本人を責めるというよりは面白がるクラスの雰囲気を怒った。
先生は後から涙を浮かべながら彼は悪くない、気持ちの良い男で調子に乗せる皆が悪いと言った。

確かに彼は自分から積極的にふざけるというよりは周りの人間が放っておかないような面白い人特有の華があり、サービス精神でふざけている感じだった。
そのことを先生は見抜いていて彼のことを思いやりクラスの雰囲気を批難したんだと今でこそ重く受け止めることができて感謝と尊敬の念が浮かんでくる。
しかし当時は先生が泣いたということだけで皆で騒いだりしていたんだろなと思う。

学校の盗難事件というありきたりな題材から観た人それぞれの感想を引き出すような作り上がりは凄いと思った。

ラストシーンが凄くかっこいい。
しかし結局は関係性を超えて一対一の人間として対峙するしかないという着地にも思えたのでもっと解釈に戸惑うような気持ち悪さで終わっても良かったかも。
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