ある中学校で発生した小さな事件が予想もつかない方向へ進展し、校内の秩序が崩壊していく様子を、1人の新任教師の視点で描いた社会派スリラー。
舞台となる中学校では、盗難事件が多発していて、ノートPCにカメラを設置して同僚教師を犯人として突き止めた女性教師が、その容疑者に対する行動によって教師、生徒、保護者から糾弾され、追い込まれていくというストーリーが展開される。
隠し撮りをしたカーラの行動は、行き過ぎとは言えるが決して間違いではない。正義感から動いた彼女にとって、何よりも教え子が疑われることは許せないだろう。正しい行動であるはずなのに、犯人である同僚から暴言を吐かれ、最終的には周囲から非難され孤立してしまうカーラ。そしてついには、生徒と教師の対立まで発展する。この小さなズレが大事に発展する状況は、何とも言えない違和感や気持ち悪さを感じさせる。
不寛容がもたらす管理社会の不条理さや、一つの正義感が崩壊を引き起こす教育現場の危うさを描いたスリリングな心理劇で、ラストまで目が離せない。犯人の息子であるオスカーは本当に可哀想で、無実の彼がいじめを受ける姿は見るに堪えなかった。いじめられる彼を見て、カーラの行動が果たして正しかったのかと揺らいでしまう。人を断罪することの重さについて考えさせられる。
ラストの終わり方は唐突で少々煮え切らない部分もあるが、それでも非常に引き込まれる作品だった。