恐怖と怒りで震えた。実在の連続殺人犯の物語を軸に女性が社会でどの様な存在かを映し出す。アナケンこれが初監督ってすごくない?これからがめちゃくちゃ楽しみだ。
女性が賢さとユーモアで男性を負かすと映画やドラマなら笑えたり痛快だったりするんだけど、現実社会だとヒヤッとする場面だったりもする。
こういう場面に遭遇すると「女性は常に笑顔で男性の顔色を伺い争いを避けるべき」だと、まるで男性が気持ちよくなるために女性が存在していると言われているようで心底嫌になる。なのでわたしは女性の機嫌を異常にとったり必要以上に喜ばせたがる男性も頭おかしいと思っている。
今作の主人公は、アナケンが幾度となくロムコムで演じてきた“男性からの承認を必要としない賢い女性”、フェミニズムを象徴する様な役柄をこれまでとは別の側面から捉えている感じが、監督としても役者としてもお見事だと思った。(アリソン・ブリーもこういう役をよくやってるよね)
駐車場のシーンの様に後をつけられたり、マンスプもセクハラも女性にとっては当たり前の日常。オーディションや役者同士での部分は、アナケンの実体験として少しはあったんだろうなと思うと苦しいけど、これも“わたしたちは1人じゃない”という共有。これは“自分だけが我慢すればいい”という話ではないことがハッキリとわかる。やっぱり共有はとても大事だ。
ただこの犯人に関してはミソジニーだけが原因という感じではない。シングルマザーやホームレスや非白人といった社会的弱者やマイノリティを狙った犯罪であることは明らかで、この犯人は決して女性ばかりを狙った訳ではなく男性の被害者もけっこういたのではないかと思う。
この犯人が狙ったのは社会から見えずらい人たちであり、彼らの生きづらさにつけ込んだ犯行と“いなくなっても問題ない”という犯人の優生思想をまざまざと見せつけられた気がして最悪な気分になった。そして彼らの存在を無視する社会も最低最悪だし、もうこんなことはほんとに終わりにしたい。
と、なかなかにヘビーな内容だけど是非たくさんの人に見て欲しい作品です。
エントリーNo.1の頭が悪い男が医者の卵っていう「シスヘテロ男性はゲームをイージーモードでプレイしてる状態」を体現したであろうジョークなどなど、男性優位社会へのユーモアたっぷりの皮肉はけっこうあっておもしろい。
この辺がさすがのアナケン!これまで出演したコメディ作品での経験が存分に活かされていたと思う。それがほんとに素晴らしいし感動した。