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青春18×2 君へと続く道のBinchoisのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
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”きみに逢えなくて 夢中で生きたら ぼくは前より なくしてばかりいる”

公開初日に臨む。鉄オタホイホイな題材なのに、なぜか周りは若い女性ばかり。訝しんでいたら、なるほど道枝くんが出ているのか。
台湾×鉄道×清原果耶めあての正統派(?)のワシが変わり者みたいじゃないか。
今回の果耶ちゃんもたまらんかったですねえ。相手役の許光漢くんより10以上も年下なのに、完全に童貞を手玉に取るお姉さんだ。罪深い匂わせムーヴを見せつけられ、18歳のような昂奮と悔しさに苛まれる。たまらん。
許光漢くんもお見事だった。実年齢は30代なのに、普通に18歳の男の子にしか見えない。そして同じ俳優であることを忘れてしまうくらい、どん詰まった30代のパートが本当にしんどい。過去の甘やかな記憶に囚われて一歩も進めなくなった30代男性のあの眼差し、うつろな瞳よ。アントレプレナーのイケメンだから狂気が希釈されているものの、同じ女性の影を10年以上も追い続けているのは精神衛生上かなりマズいだろう。
今までの日台合作作品は、日本統治期の追憶だったり、日本の技術力で台湾を教化するだったり、どこかポストコロニアルな空気が拭えなかった。
本作は、ロケーションも制作陣も作風も、日本と台湾が肩肘張らずに融合している。もっともロケーションでいえば、スクリーンに映るのは「日本人が見たい台湾」と「台湾人が見たい日本」である。民族レベルでのまなざしの交錯が、男女二人の想いの交錯を演出している構図に対して思わないところがないでもないが、まあ技法として見事なので舌を巻くしかない。
設定にはところどころ瑕疵があり、果耶ちゃんがあれほど蠱惑的に振舞うことの説明がつかなくなるような気がする。
確かに只見線で屈託のない道枝くんと一期一会するのは理想的ではあるが、残念ながら18きっぷシーズンのローカル線の車内はもっと空気が淀んでいる。

原作は台湾人作家のエッセイとのことで、邦訳が待ち遠しい。
大陸版の題名が「错过你的那些年」となっているのが面白い。なかなか的を射ているが、あの台湾青春映画を意識しすぎ?
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