東京の小学校の何気ない日常を捉えたドキュメンタリーで、1年生と6年生のそれぞれの生徒たちが日々を一生懸命に生きる様子にスポットが当てられてて微笑ましい。彼らの学校生活を支える教師たちの姿が生徒と等価に描かれるのも良かったんどけど、極力説明を排して日常をたただ映し出して行く手法がこないだ観た「大きな家」の竹林亮と似てて、作り手の主張を抑えて観客に委ねる感じはあまり好きじゃないかな。コロナ禍の小学校運営の苦労がリアルに刻印されてたのは印象的。
世田谷区の小学校で、1年生として入学するピチピチの新入生と、彼らを世話する6年生が小社会の新旧世代のように描かれる。1年生がランドセルをロッカーにギュウギュウに詰めるのがいじらしくて、このクラスのベテラン教師の包み込むようなおおらかさに癒される。6年生クラスの担任が、自己の殻を破ることをダチョウサイズの卵の殻で実演する体当たりスタイルから、教師としてのあり方に葛藤する姿が印象的。彼がルンバに掃除させながら誰よりも早く出勤するところにストイックさを感じさせる。
教育界の権威ある存在が視察に来て、日本文化の特徴である連帯責任が必ずしも良い訳ではないと説くのが説得力あった。やがてコロナ禍となり、オンライン授業が採り入れられて行くところで、ジメジメした暗さを感じさせないのが良い。縄跳びが苦手な放送部の生徒が一生懸命に練習して、最後は他の誰より飛べるようになってるのがジーンと来た。彼が放送部でパートナーの女子と語るくだりがたびたび出てきて、お互いどう思ってるのかが気になった。
新1年生を迎えるためのベートーヴェンの歓喜の歌のオーディションで、ようやくシンバル奏者に選ばれた女子が、忙しくて練習が疎かになって先生に怒られるのが切ない。でもこの先生が後でしっかりフォローするのが素晴らしい。この歓喜の歌が、ちゃんと短調から長調へと移るアレンジになってるのが曲の本質を突いてて感心した。終盤の卒業式への流れで、先生たちの熱の入れようがある意味かっこ悪いんだけど、こういう無骨な姿勢が後々記憶に残るんだよね。