みずきち

私たちの世界のみずきちのレビュー・感想・評価

私たちの世界(2023年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて。22歳の女性映画監督ってすごいなと、なにを切り取るのか、観ておきたかった。

未熟だなとかつまらないなと感じることは一切なく、とても面白かった。
全編通して漂う悲壮感・世紀末感がとても重たくて良い。社会に取り残された若者たちの、ただでさえ自分で自分の人生を決めなくてはならない不安感のある時期にさらに内政の混乱が乗っかって、どんどん自分を見失っていく過程がとても苦しい。未来が見えない不安、アイデンティティが周りとすれ違っていくようす、一時の酒やタバコやクラブの楽しさに身を任せるしかない姿、登場人物の誰も自分の状況を理解しきれていないようすなどなど、赤裸々で等身大でとても繊細だと感じた。
不明なのは、22歳でこういったテーマを描くと決めたルアナバイラミは一体どういう気持ちなのか。日本語はもちろん英語でもあまり情報がなく背景が掴みにくい。インタビュー動画もみたがそこまでは明かされていなかった。自分自身にも当てはまるアイデンティティにまつわる葛藤を描いた、セルフセラピー的なものだったのか?本人はまさにこの映画の舞台となっている2007年前後に7歳でコソボを離れているので、社会の不安感は肌で感じていただろうが登場人物たちのような体験はしていないはず。ちょっと運命が違っていたらこうなっていたのかもしれない、なのか、同世代のコソボに残った人たちはこのように苦しんでいる、なのか、どの立場でこの苦しみを描いているのか。気になる。

なにか解決の糸口や明るい希望が見えて終わるわけではないので、そこは好みが分かれるところ。でも22歳にそんな結末を作る気概に感心する。

映画1作目と2作目は同じようなテーマを描いていると思うので、これからどんなものをテーマにして映画を作っていくのか、とても楽しみになった。応援していきたいと思える人を見つけられて、東京国際映画祭に感謝。
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