炒飯

バッテリーの炒飯のネタバレレビュー・内容・結末

バッテリー(2006年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作とは違い家族の絆がメインテーマの一つとなっており、そのため特に後半は要所で映画独自の展開を見せる。
出口の見えない思春期の鬱屈や葛藤をつぶさに描写し次第に他校のライバルたちに比重が移っていった原作よりも、むしろ明快なテーマ性とストーリーの帰結を描いたとも言え、個人的には非常に好印象。「これはこれでアリ」系メディアミックスの好例であると思う。

特に主人公の巧と母との関係をクライマックスに持ってきて、明確に解決を見せてくれたのが良かった。
(駆けつけた母の応援シーンが共感性羞恥を煽る面はあるものの、巧当人が心から嬉しそうな顔をするのでプライスレス)
原作では病弱な弟贔屓の母と、野球にしか興味のない巧とのモヤモヤした関係性がそのままフェードアウトして終わってしまうため、映画版ではこうしてスッキリさせてくれたのが有難い。

もう一つの原作との大きな違いが、巧の相棒となるキャッチャーの豪。
あまりに頭抜けた才能を持つ巧の球が捕れなくなってからの展開も、鬱々と葛藤し続け巧とも距離が空いてしまう原作と違い「捕れるまで二人で練習する」というなんとも爽やかな解決。
このシーンも含め、全体として少年たちの友情が、風光明媚な田舎の空気感に乗せて非常に爽やかに描かれている。
偏執的なまでに描写された少年たちの、答えのない屈託や懊悩こそが「バッテリー」だ、という原作ファンには物足りないかもしれないが…。

これがデビュー作である、当時はまだ16歳の少年であった林遣都の、透明感のある美しさも見所。
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