このレビューはネタバレを含みます
【 あん日記 】
何が正しいのか分からなくなる衝撃作。
確かに、あの刑事が逮捕されていなければ、すなわち記者が記事を出していなければ、結果は違ったのかもしれない。コロナ禍ではないけれど、世の中が混沌としていることは確かである。
とりわけ杏は強かった。子供の頃から壮絶な暮らしを強いられ、成人になってもなお拘束されていた。
しかしながら彼女はまっすぐ歩んだ。その過程で働き、語り、笑い、そのかけがえのない一日一日を日記に綴ったのだ。だが、“ノー・コメント”以来、全てが崩れ奪われる。双六でいうと、「振り出しに戻る」になるかな。いや、幸せを知った分、それ以上の絶望となるな。
杏は強かった。どんな状況に遭遇しようとも受け入れ、その状況を必死に生きたからだ。それどころか、どの状況にも適合しようと努力した。杏の日記には、全く知らない子どもへの愛情が綴られていた。