久しぶりのアマプラで、1発目に選んだ作品。
映画が始まる前にテロップが入る。
“この映画は実際にあった事件に基づいている”
ドラッグと売春の常習犯の杏(河合優実)。
彼女の家族は母親と祖母。
祖母は優しいが、母親から壮絶な虐待を受けている。
警察に捕まった杏に、刑事の多々羅(佐藤二朗)は自助グループの参加に声を掛け、記者の桐野(稲垣吾郎)は介護の仕事を紹介をして、生活を立て直す手助けをする。
初任給で家族のためにケーキを買う杏。
そこから涙が止まらなくなった。
こんな酷い環境で育っても、家族のためにケーキを買って帰るなんて、なんと健気で優しく良い子なの?
そしてその気持ちを平気で踏み躙る母親。
介護の仕事を選んだのは、“足の不自由なおばあちゃんの介護ができるようになると思った”から。
杏はどこまでも優しい。
杏は自分の人生を変えようと、
今までを取り戻すように一生懸命頑張る。
こんなに主人公の幸せを願う映画、今までにあったかな。
母親からどんな酷い虐待を受けていたかとか、ウリをやったキッカケとか、覚醒剤に手を出したのは何歳からとかは、敢えて書きません。
未見の方にはぜひ、ご自分の目と耳で確かめて欲しいから。
ちなみに、杏の母親は私が今まで観てきた映画の中で群を抜いて、最低最悪のワーストマザー。
今思い出しても怒りが込み上げてくる。
私がぬくぬくと毎日を過ごしていた間に、こんな地獄の日々を送っていた女の子がいた。
きっと今も気付いていないだけで、酷い虐待を受けている子は他にもいるはず。
映画なので、もちろんフィクションの部分もあるんだけど、実際にあった事件に基づくお話という事で、さらに心を抉られる。
杏という優しい女性を、過酷な環境の中でもがき苦しみ、這い上がろうとした杏の生き様を1人でも多くの人に知って欲しいと願う。
レビューを作成しながら、涙が出たのは初めて。
これほどグサグサ刺さったのは、俳優陣の熱演があってのもの。
河合優実さん、佐藤二朗さん、稲垣吾郎さん。
そして母親役の河井青葉さん。
みなさん、本当に素晴らしかった!!
ネタバレ含みます↓
考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになり、やるせない気持ちでいっぱいになる。
杏には地獄のような生活から救い出してくれる人がいた。
コロナ禍さえ無ければ、あのまま学校に行きながら仕事を続けて、今頃杏は人並みの幸せを手に入れてたのではないか。
佐藤二朗演じる多々羅。
彼がやった事は最低な事なんだけど、それでも杏には希望の光になってくれたし、薬物依存から何人も救い出したのは事実。
*実際の事件では、元刑事は薬物依存の相談者の女性の下着姿を写真撮影し、ハナさん(仮名)が亡くなった後に逮捕されたようです。
子どもに対する虐待は全て許せないんだけど、中でも性的虐待に対して日本は軽視しすぎていると思っている。
自分が体を売っているからって、娘の大事な体を使ってお金を稼ごうとする母親がいる事自体信じられないし、そんな母親は一生刑務所から出て来れなくすれば良いと思う。
✳︎鑑賞後に実際の記事を読むと、ハナさんの母親もそうとう酷かったようで、ハナさんは幼い頃から暴力を振るわれ、11〜12歳の頃から売春を強いられていたようなので、母親像は事実に忠実なのかもしれません。
また祖母が万引きの常習犯だったらしいので、母親も複雑な家庭環境で育ったのでしょう。まさに負の連鎖。
コロナ禍で、仕事も自助グループも学校へも行けなくなり、孤独が杏を襲う。
そんな時にやってきた隼人の存在。
初めてのことなのに、一生懸命に大切に子育てを頑張っていた。
きっと今までも家族の面倒をみたり、介護施設で働いたりと、杏は人の為に何かをするのが当たり前と思っていたんだろうなぁ。
本当に優しい。
杏がひとつひとつ積み上げていったものが、コロナ禍や多々羅の逮捕、母親の執拗な搾取、隼人が居なくなった事により、ガラガラと崩れていく。
そしてブルーインパルスが青空に弧を描く・・・
バッドエンドというのは気付いていた。
それでも杏の一生を思うと、悲しくて胸が締め付けられて、涙がしばらく止まらなかった。
何が杏の命を奪ったのか。
もちろんコロナ禍じゃなければ、こんな事にはならなかったかもと思う。
だけど、ちゃんとした教育を受けていれば杏はあの状態になっていなかったはず。
コロナ禍で仕事が無くなったとしても、温かい家族が居れば、自死の道を選ばなかったかもしれない。
私はあの母親が杏を殺したのも同然だと強く思う。