『SRサイタマノラッパー』シリーズで知られる入江悠監督作品。主演は『ナミビアの砂漠』など今年大活躍の河合優実。ヨコハマ映画祭ベスト10で第4位に選ばれるなど日本の映画賞を快走している。
そこまで感情移入できたわけではないが、あんの壮絶すぎる人生に想いを馳せる良い映画だった。もちろん話はかなり厳しく辛い。でも同時にこんな生き方をしている人がこの世にはいっぱいいるのだろうと思うと他人事とは思えなくなってくる。
佐藤二朗、稲垣吾郎といった脇のキャストも素晴らしい。善でも悪でもない複雑なキャラクターを演じた佐藤二朗がいい。それと同じくらい毒親を演じた『偶然と想像』河井青葉さんも素晴らしい。強烈なキャラクターを鮮烈に演じていた。
実際にあった事件がもとということで胸が痛い。あんの境遇は本当に最悪。そしてあんの心を踏みにじる大人たちもまた最低。一人の人間あんを入江悠監督は一定の距離を置きながら冷静に描いていく。非常に大人な映画になっていると思う。
2024年は日本映画が不作という印象だったが、このような丁寧につくられたインディーズ映画が救ってくれた。正直演出が冷静なのはいいのだが淡々としすぎかなとは思う。盛り上がりがあまりなかったのが残念ではあるが、非常に誠実で真面目な映画だと思う。河合優実は本当にスクリーン映えする俳優さんだ。これからも注目していきたい。
