このレビューはネタバレを含みます
良い映画だった。
特に主人公杏役の河合優実の、演技演技していないその辺にいそうな演技が天才的だった。
・たまに稲垣吾郎に見える人は稲垣吾郎だった。良い役者だ。
最後に多々羅を訪ねるシーンで、「自分が記事を書かず多々羅さんが現在なら杏を救えたのか、、」と言うが桐野も十分に杏を救える可能性がある側の人だったと言ってやりたい。
・佐藤二郎は福田監督作品での印象で好きではなかったが、本作では良い役だった。
絶望的状況の杏を掬い上げるメシア的存在ながらどうも絶妙な気持ち悪さを拭えず、実際に立場を利用して犯罪をしていた役だったのは配役の妙。
また多々羅には、金八先生の様なその人さえいればどんな不良も立ち直れるとか、GTO鬼塚の様にどんな劣悪な家庭環境からも救い出してくれる様な無敵でパワフルみたいなのは感じなかった。
・主人公の杏と言う役柄も非常にキャラが立ってて、出自や薬物との決別を経て、介護施設での仕事ぶりや、他人の子を無理に預けられても愛情注いだりと慈愛的な素質がある。
また夜間学校に通ったり日記を書いたりと勉強家で、どうにか幸せになってくれと応援せざるを得なかった。
時折見せる楽しそうで幸せそうな笑顔を見ると、家庭環境(特に毒親)さえ良かったらと考えずにはいられない。
所感
ハッピーエンドではなく、答えのない問題を投げかけられた映画だが不思議と読後感は良かった。
まさに感情に訴えかけられる映画体験が出来てとても良かった。
脚本も、自然と引き込まれるストーリーラインを逸脱しないので終始世界観に没頭し、まさにただ観客として杏の幸せを祈るのみであった。。。
個人的にハッピーエンドな作品が好きで、もやもやする終わり方は好きではないが、本作に於いては一つの物語作品として、杏の死と言う結末に異論を挟む余地はなく、それでの減点など考えられなかった。
完成度が高いってことなのかなぁ。。
【追記】
実家のシーンや毒親が出るシーンは辟易。
杏の不憫さを見て落泪せざるものなし。
見てられない人もいそう。
現実には多々羅ほどの情熱を持った人すら稀有だと思うので、なんとか悲惨な人間が減る様なの世の中になってくれと切に願うばかりである。