いち麦

ビーキーパーのいち麦のレビュー・感想・評価

ビーキーパー(2024年製作の映画)
4.0
今年の映画館初めはこの作品。ステイサムの無双ぶりが見られるのは当たり前だろう…と。その上で彼が自身の所属していた秘密組織「ビーキーパー」に因んで養蜂家(ビーキーパー)を始めたのならそいつは随分お茶目なお話じゃないか(笑)等とニンマリ期待しながら臨んだ。

冒頭から組織ぐるみの悪事が対岸の火事のようには思えないほど不快。一般庶民だれの目にも極悪非道の犯罪に映るので、ビーキーパー=アダム・クレイ(ジェイソン・ステイサム)が次々と悪い奴らを成敗していくアクションは今までのステイサム映画と比べて半端ないくらいのカタルシス。
自死した詐欺被害者の娘ヴェローナ・パーカー(エミー・レイヴァー=ランプマン)がFBI捜査官でもあり、復讐の跡の犯行現場から彼女が犯人を辿っていく心境や行動にも関心が湧いた。

ミツバチのコロニーでは女王蜂のすげ替えを働きバチの方がコントロールしている(働きバチになる予定だった幼虫が与える餌の切り替えで新女王蜂に作り替えられ、元の女王蜂を働きバチが追い出したり殺したりもする)という動物行動学では割と良く知られた知見を盛んに「ビーキーパー」の行動原理に擬えていたのも面白い。まぁ民主主義がちゃんと機能した国家ならこのごく自然なルールは国民と為政者との関係にさえも当てはまることだろう。

やはり秘密組織「ビーキーパー」の凄腕メンバーが引退してホンモノのビーキーパー(養蜂家)になっちゃった経緯は見たかったな。そもそもアダム・クレイは私怨で動き始めたわけなのに、次第に正義感が纏いついて標的である黒幕の頂点まで行き着こうと奮闘するのがちょっと都合良すぎな気も。高級ビル内に在りながらコールセンターが如何にもアングラ・アジトっぽいのには苦笑。折角のジョシュ・ハッチャーソンにクールな見せ場がないのも惜しかった。でも期待通りのエンタメ作品…満足感も悪くない。

字幕翻訳は平井かおり氏。
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