このレビューはネタバレを含みます
この映画が続編決定するくらいヒットしたってことは戦争も近いな…って思っちゃうくらいには荒れた映画だった。エアーなんで荒れてるのは当たり前なんだが、悪を滅ぼすためなら無関係の人を巻き込んでも構わないってイラク戦争の時のアメリカ、或いは今のロシア、それかテロリズムだからね思想的には。エアーはアウトローだから良いけど、一般大衆が煽動されちゃダメだぞ!
まあ本作の思想が強いのはエアーのせいではなく脚本家のカート・ウィマーのせいなのだが。この男「どうせ主人公が勝つんだからピンチなんていらない、圧倒的に無双した方が良い」と公言して憚らない馬鹿者でもある。だから脚本も凄い。詐欺で有り金全部取られたお婆さんがその日のうちに誰にも相談せず即自殺するスピード感。開始10分で既に三半規管がダメージを受けている。決断力おかしいだろ。娘FBI捜査官なのに!相談したら良いのに!
そんなお婆さんに世話になっていたステイサムがブチ切れる…のは分かる。分かるが、最初からビルごと爆発はやり過ぎだって!!そのビルの中には無関係な人もいるでしょ…「受付の人に警告はした」って、そんな警告したからテロリストの潜伏する市街地は爆撃していい的な…。
その後も「悪人以外は殺してない」とフォローが入るステイサムの暴れっぷりだけどどうだろう、傍目に観たら殺している気がする笑。エレベーターに潰されたの、悪人じゃない人混じってなかったっけ…あとFBIもステイサムに撃たれまくってて、普通に観たら死んでるけどな!
そして詐欺集団の黒幕の設定も思い切りプロパガンダで…バイデン息子を揶揄するのは分かる。今、あからさまな恩赦で反感買いまくってるし。でも本作のバカ息子の親である大統領がバイデンモチーフじゃなくてヒラリーなのは流石にヒラリーが可哀想!民主党はクソ!という映画。まあ実際クソな側面もあるだろうからそこを否定する気もないんだが、「ダメな政治家は暴力に訴えて下ろすべし!」な思想との兼ね合いがなんかこう危なっかしいな!
件のバカ息子がステイサムを舐め腐る態度とか、修羅場を潜り抜けてきた部下達の方が「なんてことしたんだ、俺達は終わりだ」ってなる様子とか、「ジョン・ウィック」と丸被りすることを一切気にしない姿勢にはいっそ清々しさを覚えるが。そう、基本フザけた脚本でフザけたストーリーなんだよな。エアーの演出がシリアスで混乱するけど。全部蜂に例えて会話をするの冷静にバカっぽいし。ステイサムと対立する殺し屋、みんなバカみたいな衣装なのに大真面目に撮っているエアー。変な人だよ。
アクションは流石で見所なんだけど不満点。蜂は攻撃に使ってくれないのかよ!全部蜂に例えてたくせに!バカ息子は蜂だらけの部屋に閉じ込めるとかそういう酷い殺し方をしてくれると思ったのに、普通に銃撃一発でなんかガッカリだよ。そこまで「ジョン・ウィック」に被せるんかい。
って感じで右寄りおバカアクション映画でしたが、腐敗したアメリカを暴力によって正す主人公のジェイソン・ステイサムはイギリス人というのがこの映画で唯一インテリジェンスを感じたところでした。インテリジェンスなのかこれ。