花火

オキナワより愛をこめての花火のネタバレレビュー・内容・結末

オキナワより愛をこめて(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

テロップを含めたグラフィカルな画面構成が上手く作用しているとは思えないし、エンドクレジットの背景になる海に日が沈む光景のやたら長いラストカットは蛇足だろう。けれども被写体の魅力がそうした瑕疵を補って余りある。序盤、ボートに乗り込んだ石川さんと監督が会話する「雲が多いから良い、日差しが強いと撮りにくいから空を撮るのでもない限り曇ってる方がやりやすい、私は(撮るものが)人間中心だから」「日差しがあるとコントラストが強すぎるから?」「そうそう、"コントラスト"って英語分かるじゃん!」、撮る-撮られるの関係だけでなく、写真家と映画監督という近接するジャンルのアーティスト同士が互いに敬意を払いながら屈託なく話すその会話およびそれが可能になる被写体との関係の切り結び方にまず心惹かれる。また、その時時に発表した写真集を開くその手元――ほぼ垂直に撮り下ろされた写真集の誌面――を正面に写しながら思い出すように語られる中で、特別な思い入れがあるという「赤花」に話が及ぶと「(米兵向けのバーやホステスで働いていた)黒人米兵を愛した彼女たちの生き様は美しい」と力強く肯定するその語り口が印象深い。
中盤辺りに配置されたシャワーを浴びがん治療の手術跡(人工肛門さえ直接的に写される)を手当てする場面は、それまでのエネルギッシュな姿との急激な落差に不意を打たれる。
終盤、人の気配もまばらで建物も風化した街の中で石川さんがこのクラブはどうこうで〜と克明に語るとき、カメラはそのクラブの入口を真正面からフィックスで捉えている。石川さんが画面左に歩いていくがカメラは慌てて追いかけたりしない。当時の写真を挟んでカットが変わり同じ画面がようやく左にパンし始めるが、このときカメラは寂れた通りを撮ることを優先し語り部の石川さんは画面右端に見切れるくらいとなっている。ここでのフレーミングの選択はかなり勇気が要ることだったと思う。これは素晴らしい。
最後にどうでもいいこと。映画の終わり際に石川さんと監督がテーブルを挟んで向かい合いながらタコライスを食べるとき、店内BGMなのか「WISH」の2番サビが流れている。「街に愛の歌/流れはじめたら/人々は微笑み合う/鐘の音響く時僕は君をきっと/強く抱きしめている」出来過ぎだろ。
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