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義父養父のsaのレビュー・感想・評価

義父養父(2023年製作の映画)
4.8
切実な空気が流れる。細い糸がピンと張っているような淡々とした緊張感と映像が美しく、1時間その世界観に没入する。
だれかの感情や行動のプロセスがしっかりと語られることはない。それを捉えたいと掘り進めていくかのような作業を鑑賞しながらしていた。
他者の心なんて到底理解できない、だけど理解したいと関係を築いていく中で、自分が誰かの侵入者になって他者を傷つけていることも多々あるに違いない。そのひずみで生まれる他者と自分の怒りや悲しみに対峙することが「成長痛のような感覚」なのかな。。
フミコの抱えるものに対峙したラストシーンはこちらまでそんな痛みを負う感覚になった。
うまく言葉を当てはめられない感情が生きているとたくさんある。人生を重ねるほどそういう、心に石のようなものを抱える場面が増える。鑑賞後はそんな異物が体に侵入したみたいな体験をしたのだった。

3人それぞれの手のカットが、それぞれの個性を物語っていたのも良かった。
弾き語りのシーン、ラストシーンの美しさにいっぱいいっぱいになってしまい、思わず涙が出てしまいました。
とても好きな一本。
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