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コンテイジョンのEikeのレビュー・感想・評価

コンテイジョン(2011年製作の映画)
3.5
2011年の公開でしたから一昔前の作品となりますが、コロナ禍のただ中にあっては全く「洒落にならない」印象の作品となっています。

中々に豪華な面子を揃えた作品で、監督はベテランのソダーバーグ氏でありますから正に鉄板の出来といったところでしょうか。
が、しかしもはや時代はかつての様な「オールスター映画」を求めていないのでしょうかね?
「タワーリングインフェルノ」を彷彿とさせる70sや80sの豪華スター夢の共演といった「華々しさ」は微塵とも感じられない作品となっております。

もちろん世界的パンデミック状況がテーマの映画ですから、このドキュメンタリタッチは当然狙って仕掛けたものであるのでしょう。
ただ、それが観客の意に沿うかと言えば、ちょっと微妙だったのではないでしょうか。
私自身、決して退屈はしませんでしたが、かといって特にハラハラもドキドキもしませんでした。このある種坦々とした気配も狙い通りなのでしょう。

豪華なキャストではありますがその“スターたち”によるインターアクションは非常に限定的で有機的に結びつくような展開にはなっておりません。
本来、オールスターキャストと言うのは普段見れない様なスターたちによる化学反応的な共演を楽しむものであったと思うのですが…。
いい例がM・デイモンとK・ウィンスレットのくだりですかね。
エンタティメントの定石に従うのならあの二人の間にもっとドラマが盛り込まれてしかるべきはずです。
実際の所ケイト・ウィンスレットは本作の撮影には10日間しか参加してないそうで、その辺りからも本作のドキュメントタッチの意図が伝わってくる気がします。

ではこの豪華な配役は只の「無駄遣い」なのかと言えばそれは違いますね。
本作はかつてないウィルスの脅威に遭遇した人類の危機を世界的な視線で描くのが意図であり、したがって地域も設定も異なるシチュエーションドラマを多角的にまとめる必要がある訳です。
当然、各エピソードは細切れにならざるを得ないのですが、そこで速やかに観客の関心をドラマにつなぐためには存在感に富んだスターパワーに頼ることが必要であったということでしょう。
その意味では成功しているとは思います。
ただエンタティメントとしてはも少しドラマティックなサービスも欲しかったかなぁ。

本作でベースとされたのは1990年代にマレーシアで豚-人の間で広まったニパウィルス感染症ですが、コロナウイルスの登場によって苦境に置かれた我々の現在の状況を考えると、一種のシミュレーションとして見る分には中々に興味深いテーマ&描写の多い作品でした。
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