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ゴースト・トロピックのmnsのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.5
俺たちの人生は、不可逆性をもって流れていくもので、その線上に無数の邂逅と別離(この2つの間隔はときに永遠に思えるほど長く、ときに瞬きのように短い)が穿たれながら、ただただ伸び続けていくのだと感じた。

この映画で描かれるささやかな優しさに満ちた巡り逢いは、人生の長さに比べればほんの僅かな時間に過ぎない。だからこそ、そのかけがえのなさが煌めくのであり、だからこそ、流れ続ける人生の中で徐々に色褪せてゆくだろう未来を想像して、どことなく切なさを覚える。夜の普遍性と残酷さを幻想的に掬い取りつつも、眠る都市の横道での取るに足らない出会いと別れの間に、多文化多言語国家のリアルも垣間見せる。この地に足ついた部分も好きだ。

冒頭とラストの、部屋が夕闇に沈むまで/再び陽が差し込むまでを捉えた印象的な長回し(の早送り?)や、主人公が眠りにつくまでのクロースアップ、ただ家を目指して歩くショットなど、時間だけが過ぎるさまが映されており、そこにはまさに「流れ続ける生」があった。
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