また何度でも此処へ戻ってきたくなるような、日々のセーブポイントとして本作を胸にしまっておきたいですね。
思わぬハプニングから突如はじまったプチ逃避行。
此処ではない何処かへ。
見知らぬ景色はmidnight。
現実と幻想とが入り混じる魔法の時間です。
オンザロードならもってこいのモチーフでしょうか。
彼女が迷い込む未開の先々にはいつも、当たり前を当たり前に過ごす生活者でありふれていて、次第に彼らの息づかいが浮かび上がってきます。
冒頭の語りによれば本作の主体は寧ろ彼彼女らの背景を想像することでしょうか。
多民族国家であるベルギーの出自から考えても、日本人が想像できないくらい複雑な国内社会の実態を映し出すのにぴったりのコンテクストです。
長い間離れていた故郷を再び訪れたとき、今度は訪問者として、その土地の豊かさを改めて噛み締めるように。
自身からすれば何の感動も湧かないありふれた日常でも、誰かにとっては新鮮で特別な時間なのかもしれないでしょうか。
この監督の作品は、普通に生きてたらそれこそ平気で手放してしまいそうなナニかを思い出させてくれます。
ブリュッセルの夜景を堪能できる旅映画としても抜群です。