塚原重義世界で贈る、地図屋カガリの“箱庭”探訪。
『クラユカバ』に強い感動を覚え、本作を鑑賞するに至ったのですが、個人的には『クラユカバ』の方が1本の作品として優れていたと感じました。
塚原重義お得意の大正ロマン×スチームパンクな世界観はそのままに、本作では複数のキャラクターが押し出される群像劇の形式となっていました。
これは偏に、シナリオ原案に成田良悟が関わっていることに起因するのでしょう。
主人公のカガリを始めとした、魅力的なキャラクターが何人も登場していたのは事実です。
がしかし、61分という尺ではそのすべてを処理していくだけの時間が足りておらず、期待していたドラマは朽縄の分しか見ることができませんでした。
せめて主人公の顬にあった傷くらいは、ドラマとして触れておいても良かったのではないでしょうか?
1人だけエモーショナルな過去回想が語られた訳ですが、その語りも説明不足感が否めず、一応描写と対応させて飲み込みはしたものの、不親切な描き方のように感じる部分もありました。
また、アニメーションに関しても、アクションシークエンスは良い部分も見受けられましたが、CGが浮いているように思える箇所が幾つもあって、それらには如実に没入感を阻害される心地でした。
あと、これは『クラユカバ』を先に観た弊害かもしれませんが、本作の台詞回しは耳心地があまり良くなく、語り口調は『クラユカバ』的なアプローチを期待していた自分もいました。
総じて、期待して観に行ってしまったばかりに、意匠で気になる部分が大量に見つかって、ノり切れなかった作品でした!