ぶみ

スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲームのぶみのレビュー・感想・評価

3.0
あなたの価値観を完全に覆す最終計画が始まる。

志駕晃が上梓した『スマホを落としただけなのに 戦慄するメガロポリス』を、中田秀夫監督、成田凌、クォン・ウンビ、千葉雄大等の共演により映像化したサスペンスで、シリーズ第三弾となる完結編。
日本を脱出した連続殺人鬼と、彼を監視するエージェント等の姿を描く。
前二作は鑑賞済みかつ原作は未読。
主人公となる連続殺人鬼・浦野を過去作同様成田、浦野を監視するエージェント・スミンをウンビ、浦野を追う刑事・加賀谷を過去作同様千葉が演じているほか、大谷亮平、佐野史郎、真飛聖、髙石あかり等に加え、過去作から井浦新、白石麻衣、田中圭、原田泰造も引き続き登場。
一作目が襲われる側を、二作目では事件を追う刑事を主人公としていたところ、本作品では満を持して犯人側である浦野を主人公に据えているのは、シリーズものとして面白いもの。
そんな本作品は、浦野と彼を雇った裏組織のエージェント、そして彼を追う加賀谷の三人を中心として展開、ファーストカットでは一作目の映像から北川景子演じる富田麻美が登場するも、その北川は映像出演のみで終わっていたのはガッカリ。
その後、前作のラストで日本から脱出し、韓国潜伏している浦野が裏組織とタッグを組むこととなるのだが、その裏組織のエージェントを日韓合同のIZ*ONE(アイズワン)なるアイドルグループの元メンバーかつリーダーであったウンビが演じているため、その美貌はお墨付きで思わず目を奪われた次第。
ただ、内容そのものは、原作が韓国が登場する設定なのかどうかわからないが、韓国のシーンに韓国らしさが薄かったことを筆頭に、何故かその裏組織のリーダーを日本人の大谷が演じている、浦野が案外流暢に韓国語を喋っているのに対し、エージェントが片言の日本語を使って聞き取りにくい、劇中に登場するオンラインゲーム映像がショボすぎて全く面白そうに見えない、原題のサブタイトル『戦慄するメガロポリス』からわざわざ『ファイナルハッキングゲーム』と変更しているのに、ハッキングゲームにすらなっていない等々、これまた過去作同様ツッコミどころ満載。
何より、韓国ノワールのような雰囲気を出したかったのかもしれないが、そんな重厚感とは皆無であると同時に、昭和の二時間サスペンスドラマかのように現在の状況を全て台詞で喋ってくれる展開は、前述のツッコミどころとも相まって、ある意味安定の中田監督クオリティ。
加えて、キャストについても、井浦が公安捜査官として圧巻の演技力を見せているのに対し、成田は目を剥いていればサイコパスに見えるだろうと言わんばかりのワンパターンさに加え、どうしても井浦と比べると劣ってしまう千葉と、前作のヒロインである白石とのやり取りに至っては見るに堪えないレベルであり、こういったところは個々の技量ではなく中田監督の演出だと信じたいところ。
ミステリやサスペンスとしての面白さよりも、ラストのキレ味も含めるとB級コメディかと思うような仕上がりであり、シリーズものの完結編としてはしっかり締まったかなと思う反面、実はリメイクの韓国版がシリーズで一番クオリティが高かったのではと思うとともに、髙石が登場するシーンだけ、阪元裕吾監督『ベイビーわるきゅーれ』シリーズのちさとに見えてしまっていた一作。

公安の最大の武器は開き直りだ。
ぶみ

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