私たちの当たり前の日常が、いかに誰かの犠牲の上に成り立っているか。「2.7m/s→70kg→0」の意味。ベルトコンベアを止めるために自分の命を使おうとした山崎。だけどそれをもってしても止めることはできず、血に塗れても残酷に、何もなかったかのように動き続ける社会。70kgの衝撃もない、1人の命。商品が安価で手に届く代償に、そのために尽力する人たちの体や命も安価なものとして扱われる。山崎がロッカーに残したメッセージの意味に気がついた孔。爆弾事件が最終的に及ぼした影響は微々たるもので、ハッピーエンドでもなければ、エレナが言ったように「爆弾はまだある」。DAILY FASTの荷物が日本中、世界中に届くように、そこかしこにまだ爆発していないだけの爆弾が。五十嵐は止めなかった。エレナは止めた。次の爆弾が作動した時、孔はどうするのか。誰が爆弾を作り、誰が爆弾を作動させ、誰が爆弾の被害を受け、誰が爆弾を止めるのか。誰しもがこの作品の誰かの立場になり得る危うさ。
ただ、ドラマのクロスオーバー作品だからという理由を抜きにしても繊細な問題を大きい展開で描いているせいか(それが良い悪いではなく)、私的にはどうしてもスペシャルドラマ感が拭えなかった。