会話の中で突然姉が喋り始めても、BGMのようにそれを無視して会話を続ける家族。「私たちが勉強を厳しくし過ぎた復讐として統合失調症のふりをしているだけ」と言う母。そして姉を然るべき機関にちゃんと診せなかった責任の所在をお互いになすりつけあっているかのような両親。間違っていることはわかるけど、でも、どうすればよかったのかはわからない。観客として、こうすればいいのにと思ったことはあるけど果たして自分は当事者家族になった時、本当にその選択ができるのか。発症当時の精神医療で姉の症状は改善したのか。もしかしたら違う選択をしたことで、家族は毎年お正月に集まるような、喜寿や還暦を祝う関係性ではなくなっていたかもしれない。ただ、「失敗したとは思わない」には、首を傾げる。カメラに向かってピースをしたり、ポーズを取るお姉さんの姿が忘れられない。