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ジョン・レノン 失われた週末のtakのレビュー・感想・評価

3.5
熱心なジョンのファンに怒られそうだが、このドキュメンタリー映画で描かれる70年代半ばのジョンについて、特にこの"失われた週末"と呼ばれた期間については予備知識がとても乏しかった。偉そうなレビューは書けないので、ご容赦ください。

ジョンとヨーコの個人的なアシスタントであった中国系アメリカ人メイ・パンがジョンと過ごした日々。映画は、当時の楽曲、プライベートショット、交流があったアーティストたちとのエピソード、そしてヨーコとの関係が、生々しい証言と温かみのあるアニメーションやジョンの落書きと共に示される。気を抜くと置いてかれそうなハイテンポで映画は進行する。興味という欲望があるから、映画に引きずられているみたいだった。

言い訳がましくなるが、僕がジョンに真剣に興味を持ち始めたのは「ダブル・ファンタジー」からだし、ダコタハウスの惨劇の後だった。だから当時僕が目にしたのは、音楽的な偉業と、美談として語り継がれそうなラブ&ピースなエピソードばかり。

だからこの映画で語られるのは、よく知らなかったことが多い。ヨーコと離れてある種の安らぎを得たこと、メイと愛し合った日々、そしてヨーコとメイとの間で揺れる心情。エルトン・ジョンやデビッド・ボウイと共演していたのは知っていたが、スティービー・ワンダーとセッションした話にはびっくり。

ヨーコのインタビューこそ挿入されるが、基本はメイ・パン側からの証言で構成されている。かなりヨーコの印象が悪くなるような内容ではあるが、それも彼女の一面なんだろう。

失われた週末と呼ばれた18ヶ月、ジョンが悪ガキだった頃の無邪気さで音楽に向き合っていた様子が心に残った。
I too play the guitar, sometimes play the fool.
(僕もギターを弾くし、時々バカをやる)
と、ジョンはBBCライブのアルバムの冒頭で喋る。他のメンバーが担当楽器と名前を手短に自己紹介する中で、一人だけふざけたことを言うジョン。この映画で登場する、フィル・スペクターや気心の知れたメンバーで自作曲なしのアルバムを製作する場面は、とても音楽を楽しんでいるのが伝わってワクワクした。それはまさにバカをやってるジョンだった。

そして、息子ジュリアンとの関係には心温まる。子供の頃のジュリアン、最強の美少年っぷり。メイがみんなをつないでくれていて、果たした役割の大きさがよくわかる。音楽を介した人と人のつながりは強いし、時に大きな啓示を与えてくれる。ヨーコとメイがジョンにもたらしたものは、どちらもジョンを形造る大切なものだ。

無性に#9 Dreamが聴きたくなった。
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