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靴みがきのtakのレビュー・感想・評価

靴みがき(1946年製作の映画)
4.0
個人的プロジェクト「名作映画ダイジェスト250」(ロードショー誌80年12月号付録)制覇計画のためセレクト。

ネオリアリズモと呼ばれたイタリア映画では、戦後のイタリア庶民が直面する厳しい状況が描かれた。ビットリオ・デ・シーカ監督は「自転車泥棒」も同時期の名作として名高いが、本作は少年たちの辛い物語を軸にしているだけに、公開当時は多くの観客が涙をにじませたに違いない。この監督が後に艶笑コメディ撮るなんて、この悲しい物語しか知らなければ想像もできないかも。

アメリカ軍が駐留する戦後のイタリア。靴みがきをして家計を助け、生計を立てている少年、パスクァーレとジュゼッペは、兄から米軍の払下品を売る仕事を頼まれる。それが盗品だったことから警察に逮捕され、二人は少年院に送られる。主犯について黙っていた二人。しかし取調官がジュゼッペに乱暴しているように見せかけたことから、パスクァーレは自白してしまう。二人の関係は崩れ始める。

観てる間ずっと、「みんなビンボが悪いんじゃ!」って高橋留美子のコミックに出てくる台詞が頭をよぎる。貧困を描いたイタリア映画と日本映画には敵わない、めいた評論を目にしたことがあるが、「靴みがき」を観ていると、それは確かにそうかもと思わされる。

子役が可哀想な役柄を演じて観客を泣かせるだけの映画なら、この世にいくらでもある。けれど「靴みがき」には大人たちの汚さやズルさ、生きていく厳しさもきちんと描かれていて、単に子供が可哀想なだけの話に終わっていない。少年たちのトラブルの責任を取らさせられる中間管理職的なおじさんの悲痛な表情。権威を誇るだけのその上司。ジュゼッペの親に依頼された弁護士は、親がいないパスクァーレに全ての罪をなすりつけようとする。

悪い仲間に唆されて脱走を謀るジュゼッペ。行方を追うのに協力を申し出るパスクァーレ。二人が対峙するラストはあまりの悲劇に言葉を失った。予備知識を入れなかったので、単に貧しい暮らしが描かれるだけの映画だと思っていた。しかし少年院での人間模様の巧みさには引き込まれた。院内で映画鑑賞会が催される夜、パスクァーレが「寝起きができて食事もできて、たまには娯楽まである。外にいるよりマシだ」と呟く。刑務所を行き来している大人が言うのではなく、子供の口からこの言葉がでるのは、なんとも切ない。みんなビンボが悪いんや。
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