めるぽちゃ

トラペジウムのめるぽちゃのネタバレレビュー・内容・結末

トラペジウム(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞前にチラ見した感想では、主人公が「ゲスい」「人の心が無い」などと言われていたが、自分の感触としては、場面を切り取ればそう見えなくも無い部分もあれど、全体を見ればそこまでの事は無く、アイドルという光に執着し不器用ながら必死に手を伸ばす少女と、それを支える仲間との美しい青春物語だった。‬

主人公の『東ゆう』の性質としては「アイドルへの妄執に取り憑かれている」「他者への興味が薄い」といったネガティブな面が目立つ。
その為に「人間関係に打算的」になり「他者の心情を蔑ろにしてしまう」という事が起き、結果周囲を傷つけてしまっている。この点は確かに褒められるものでは無い。

ただ見方を変えれば、妄執に突き動かされる様は「ひたむきな努力家」でもあるし、他者を巻き込んでまで進み続ける「巨大な原動力」を備えている事でもある。
他者への興味の薄さも、出会ってすぐの東西南北の他メンバーからすれば分け隔てなく接してくれる「優しさ」や「公平さ」ともなり、各々の救いになっていた様に感じた。

また、ゆうの他メンバーとの交流や扱いに関しては、動機こそは自分の為にではあろうが、決して道具や物のように利用するという考えでは無く、本人の言にもあったように「アイドルとなる事が誰しもの幸せになりうる」と本気で思った上での行動だったのだろうと思う。

そして、本人が意図しない中でゆうの「原動力」と「優しさ」を受けて、環境を好転させられた他メンバーは、そんなゆうの「執着心」や「不器用さ」「独りよがり」をある程度理解し受容していたのでは無いかと個人的には解釈した。それ故にギリギリになるまでゆうの『アイドル』に寄り添っていたのだろうし、そうであればこそ終盤の展開にも納得がいける。

と、ここまでドラマ部分が今までにない面白さだったのでその点について長々と書いてきたが、キャラデザや作画も秀逸で、女の子がみな可愛く描かれており、視覚的にも満足度が高い作品だった事を記して〆とする。
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