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トラペジウムのanqのネタバレレビュー・内容・結末

トラペジウム(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 この作品、プロのもの書きが絶賛・酷評とも芯を食ったレビューをしてくれないので自分の感じたことを書いてみる。
 これはアニメ映画だけれども、画面割を分析してみると東ゆうに密着する一取材班しかないドキュメンタリー形式であることに気付く。この密着しているけど覚めたカメラ。ここに気付けば彼女が性格悪くて視野の狭い子であることを、透明な取材者は別に肯定しているわけではなく、作中事実を陳列しているに過ぎないということになるわけ。まあ激しく演出は入っているが。
 かくして彼女の視野の狭さに取材班は付き合っているけど他の子たちには他の子の事情があることは管見出来るようになっていて、それが起承転結の転の部分に来る東西南北(仮)崩壊への導火線になっている。結論を言えば、残り3人にアイドルに向いている子は一人もいないのでこの崩壊は必然である。でも普通のアイドルもののようにこんな東ゆうから短かったアイドル活動へと至る道筋を通して、何か輝くものを受け取るのだ。
 個人的には、これまた思ったようには成功していないアイドルアニメのシリーズである『Wake Up,Girls!』の第一シリーズで、作中の同名のグループがライバルというには大きすぎる存在であるAKBっぽいユニットI-1 Clubから、対立する関係を越えて輝くものを受け取るシーンを連想したが、まあそこを連想する人は他にはいないだろうしどうでもいい。
 絵作りのストレートさはいっそすがすがしいほどで、天候イコール東ちゃんの感情である。それは原作小説では全然紙幅がないところなので、崩壊後の激しい悪天候はアニメ製作スタッフが特に意を砕いたところだと言えるのだろう。
 それからタイトルにちなんでとにかくオリオン座が映る。その星団の名前がタイトルに採用されているし、東っちのノートにもずばり他メンバーを星に例えているくだりがある。東ゆう本人も含めた4つの星が成す不等辺四辺形(トラペジウム)には他にもE星のような星があり、そこに作中で位置するのは、4人全員の好感を得る車いすの少女・サチだろう。彼女は躓きばかりの東ゆうの軌跡をファンとして肯定してくれる意味でも、最後の和解の呼び水となる行動をする意味でも重要人物だ。
 東っちの中の光を最初に見つけた人物・工藤真司も、女子生徒の制服に興味があると言ってみたり、コスプレ写真館で女装肌色多めコスをさせられているなど登場時からしばらくはイケてない感じになっていたのに、同じ工業高校の誰かの影響なのかラストではおしゃれになってた。彼も見た目とは別に内面の光を感じる人物なので一貫して楽しく観れた。
 ネットで知己を得る人たちは四六時中東ゆうのことばかり考えている人が多く、個人的にはわかりつつも引いている感じだが、何かに一生懸命に突っ走ったことのある人にはお勧めしたい映画。
 内村さんのご老体は特に演技面で気になるところはなかったが、一緒にいた一人、なんでそんな無理のあるキャスティングをするのと思ったら原作者ですか。うん原作者はそのくらい役得があってもいいよね。
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