悩める科学者が平和のために暴走した話。
ロンドンの首相邸に、国立科学研究所勤務の核兵器研究者ウィリントン教授(バリー・ジョ-ンズ)から手紙が届いた。
“もしイギリス政府が核兵器の製造を中止しなければ、新開発のU.R.12爆弾を一週間後にロンドンで爆発させる”
最初は半信半疑のスコットランド・ヤード捜査課長フォランド(アンドレ・モレル)だったが、教授は爆弾を持ち出し行方不明だと判明する……というパニック+サスペンス。
爆弾はタイプライターくらいの大きさで持ち運び可。
核に対して一般的にある程度の知識が(皮肉にも)周知されている現在では(おいおい被爆大丈夫か……安定性は……)と突っ込みたい気もしますが、当時の核の一般的な認識は『ダイナマイトの威力がデカくなった奴』この位だったんだろうなと(ウラン放射能発見時の研究者も防護服とか着けずに触っていた……と雑な記憶)
月〜土曜日までカウントダウンされてゆく展開が緊張感を高めてゆきサントラの木管楽器?の音色も不穏感を煽る煽る。
教授の娘と教授の助手が捜索に手をかし、何とか彼に爆発を思い留まらせようと奮闘しますが、一旦取り憑かれた恐怖にはあらい難いのか、ラストで教授は起爆装置をオンに。
(ロンドン市民の大疎開が展開済、市内は無人に)
皮肉なのは、教授を説得しようとする娘や助手もその場にいるのに、爆発の恐怖から我先に「もう間に合わない!間に合わない!」
と叫びその場から逃走する教授の姿。
非常に人間らしいというか、世界が核によって滅びる恐怖(クソデカ主語)より自分(ミクロ主語)が爆発で吹き飛ぶ恐怖がやはり上回るという秀逸な演出だと思いました。
期日まで教授を確保出来なかったため、首相が国民および教授に向けて演説を行いますが、この内容が見事。
(WW2ほんの数年後の製作、核保有=抑止力を前提にした演説ですが、現代にもこのジレンマは当て嵌まる……)
『核兵器の開発は好まずとも必要なものです。教授に伝える。
あなたの脅しに我々が屈したら我が国のみならず自由国家全体をより危険にさらすことになる。
教授の意見を我々が受け入れたら相手国の善意ある人々に有効に訴えるかといえば、そんなことはなく多くの人の耳に届きはしない。
新聞やラジオに圧力をかけて統治者が知らせようとしないからです。
歴史が教える通り弱者は圧制者の餌食になります』
今、蛮行ともいえる侵略を起こし、核への脅しをチラつかせている某国の首相……が頭の中をよぎっていった。
映画はパニック映画のテイでもあるけれど、教授捜索+教授が逃げ回る(変装したり、下宿屋に隠れたり)経過があり、教授の心理も分かるようになっている。
後半の演説〜ロンドン市民大疎開〜軍人のみが闊歩する人気の無いロンドン中心部の静けさが見どころかも。
毎日毎1時間毎の頻度でプー○ンふざけんな💢と怨念を送りつつ過ごしている日々でござる。