このレビューはネタバレを含みます
けったいな設定を使って描く釈然としない物語──内戦が勃発したアメリカ。ワシントンD.C.の陥落が目の前に迫る中、伝説の写真家リーと飛び入り参加の若手写真家ジェシーを含む4人のジャーナリストがワシントンD.C.を目指す。“shoot”のダブルミーニングの話はザッツオールだしトランプ狙撃事件とのリンク的な話も一旦置いとくけど、本作、特にロードムービーとなる前半は、被写界深度の全く異なるふたつのシーンを繋いだり、ひとつのシーンでカメラのピントをいじるかのように被写界深度を変化させたりする視覚的なトリックを駆使して観客を飽きさせない工夫が凝らされている。音楽もガンガン鳴る。後半は一転、戦争映画にジャンルチェンジし、ここではヘリコプターのプロペラや爆撃・銃撃の激しい音とシャッターを切る瞬間の無音を組み合わせ、観客を主に聴覚的に引きつける。
要するに、ボーッと観てても物語関係なしに没入させられる映画だなって思ったのだ。そしてなんでそんな含みのある感想が先に来たかというと、物語が釈然としなかったからだ。
結局、青二才が分不相応なフィールドに憧れだけを携えて突っ込んでいったら仲間をたくさん死なせてしまいましたって話だと私は思ったし、そこがどうしてもノイズになってジャーナリストの矜持や存在意義みたいな観点で物語を観るに至らなかった。最初の戦闘からすでに、ジェシーは安全と仲間を軽視した向こう見ずな行動を取っている。ジェシーはリーの目の前を横切ってこちらに銃を乱射してくる兵士の射線に入りかける。負傷するリスクも高いうえに、リーのシャッターチャンスを奪ってもいる。ジェシー・プレモンスに仲間を殺される展開も、結果的に見ればジェシーが悪ふざけに悪ノリしてしまったことが一因だった。ラストは言わずもがなである。こんなけったいな設定を使ってそんなことを語って何になるんだろう。世間的な評価は高いようだし、きっと私が見落としている物語があるんだろうなと思いつつ、けっこうな人が映像と音の没入感にめくらましされてないかなとも思いつつ。