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ザ・キッチンのスミスのレビュー・感想・評価

ザ・キッチン(2023年製作の映画)
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ジョーダン・ピール監督作品の常連で『ゲット・アウト』や『NOPE/ノープ』で主演をしているダニエル・カルーヤが監督デビュー(共同)した作品。

ある女性の死をきっかけに、主人公イギーと少年ベンジーの人生が交差する。近未来のロンドンを舞台に、貧富の差から生じる社会の分断を描いた映画である。

イギーが「ゴミ溜め」と呼ぶ、自身も身を寄せる団地が“ザ・キッチン”。イギーは葬儀場に勤めているのだけれど、貧乏人は自分の葬式や埋葬すらままならない、みたいな描写があってちょっとキツかった。亡くなった人は植物に変換され、しばらくの間葬儀場の庭園に置かれ参ることができるのだが、一定の期間を超えるとそこからなくなるとだという。「植物に変えられた死体はどこにいくの?」とベンジーが何度か聞くのだけど、イギーは「植物は植物だ」としか返さない。

以前観た邦画『PLAN75』は、75歳以上の老人が自分の手で命を終わらせることに政府が手を貸す未来が描かれていたが、あの作品ではたしか合同葬みたいなことが行われると謳っておきながら、実際は死体がゴミのように回収されている描写があった。なんだかそれを思い出してしまった。

イギーとベンジーの距離の縮まり方が一筋縄では行かず、何度もヤキモキしてしまったのが心残りではある。が、ラストはほんのりとやさしいシーンで幕を閉じた。絶望と隣り合わせにいながらも生きる人たちの瑞々しさや、近未来のロンドンの世界観に見応えがあってよかった。去年観たNetflixドラマ『BODIES/ボディーズ』でも一部近未来のロンドンが描かれており、イギリス制作の作品はああいう描写がうまいな〜と思った。それこそダニエル・カルーヤが出演していた回の『ブラック・ミラー』とも近い雰囲気を感じた。
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