2024年。面白かった。家が火事になった直後に振り込め詐欺に遭った不幸すぎるおばさん・ドッキの元に、騙した当人から電話が。「実は中国の某所に集団で監禁され詐欺行為を強制されている」「すぐに入金のあった行動力のあるあなたに助けを求めたい」との言。警察も動いてくれないし懸賞金も欲しいドッキは、送られてきた数少ない情報を元に無謀にも中国・青島へ! 普通のおばさん大捜査線!
主人公ドッキも同行する友人知人たちもマジで、掛け値なく(?)普通のおばさん/お姉さんであり、そんなおばさんたちが中国で詐欺グループに迫るなんて無茶な話があるわけないのだが、本作、実話がベースだってんだから凄い。さらに凄いのが実話ベースであろうと無茶なのに、映画を観ているとまるで無茶に感じないのである。ここがさらに凄いと思う。
ドッキほか同行する皆さんのパワフルさ、バイタリティ、キャラとしての体幹の太さがずば抜けているのだ。無理が通って道理が引っ込む佇まいと存在感があるのだ。生き生きとしている。むろん「警察は頼りにならない」「情報提供の懸賞金が必要」などの理由づけと背景はあるものの、あくまで背景に没している。「この人たちなら行く」「この人ならやる」という説得力が段違いなのである。
一方の詐欺グループもドッキたちに劣らぬ存在感を示す。こちらは暴力と恐怖による存在感である。仕事の斡旋と称して韓国から中国へ若者を連れてきて使い捨てで詐欺を行わせている、そういったおっかない暴力集団のありようをきちんと手心なく、おそろしく描いている。明るくパワフルで善良なドッキたちとの対称としての暗くダウナーな悪党。組織のボスも同情の余地がミリもなけ、ド外道すぎてナイス。つまりパワーと暴力とで駆動する映画なのである。
一方でこの二組がクロスするクライマックス、ドッキが非道な目に遭いすぎて、もちろん最後はリベンジをやってのけるのであるが、あまりにもやられすぎていてこちらの心のバランス、怒りとスカッとの収支がうまくいっていない感があった。おばさんvsたぶん鍛えてる悪党なので、全身の骨の半分を折るとかは無理でも小指を噛みちぎる、耳を削ぐくらいの仕返しは何とかなされてもよかったのではと感じてしまう。いやまぁ、普通のおばさんは小指を噛みちぎったりはしないんですが………
そんなわけで展開やラストの字幕(払ってやれよ!!)に若干のモヤモヤも残しつつも全体にはパワフルで、韓国映画はまだまだ全然、力があることを見せつけてくれる一本でありました。普通のおばさんが主演で主役ってのがすごいのですよ。これを観た後で『犯罪都市』や『ビーキーパー』を観るとちょうどよいと思う。