べし酒

水深ゼロメートルからのべし酒のレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
3.5
スタートから、まああの年代っぽさの表現のセリフなんだろうけど「見た」「見るな」の、いかにもオリジナルが舞台劇というようなしつこい応酬にやや鼻白む。
補習の名目なのに監督もせず、まるで何かの罰の様にプール掃除をさせる、さとうほなみさんが演じる高圧的な教師山本に腹が立つ。

女子生徒4人と教師1人、それぞれが自分の役職的立場や女性性と自己実現的なことに行き詰まりを感じていてという、なんとなく言いたいことは分かる気がしないでもないけど、どうも「男の子は悩まなくていいね」みたいな感じにも思えてしまって…

野球部マネージャーのリンカと、そのマネージャー面接に落ちたココロと合わせて考えると2人ともジェンダーロールやバイアスに囚われている様にも見えるが、本人たちがそれが自分にとってやりたいことと言ってるのを見るとそこに対して批判的な話でもない様にも思える。

チヅルは中学時代は同じ水泳部の同級男子の楠に勝てていたのに、今は野球部の彼に負けてしまうことに行き詰まりを感じて水泳部を辞めようと思っているということなのかと思うが、それは成長に伴いついてくる性的な体力差を簡単には受け入れ難いということか。
そのフォロー役としてのユイ先輩はチヅルが充分凄いと思っているのに、先輩に対するチヅルの「私より遅いアンタに言われたくない」という言葉にまた腹が立って、何処かで謝るのだろうと思ったら結局謝らないことにまた鼻白む。ココロがミクに「ブスはいいよね」と言ったことも同様。
相手を傷付ける様なことも率直に言ってしまうのが若さだとしても、素直にそれを認めて謝ることが出来るのも若さなんじゃないのかと思ったり。
そこが自分の間違いを認める訳にはいかないと思っている大人の山本先生との違いじゃないのかなとか思ったり。

最後は楠に宣戦布告したチヅルに触発されて男踊りを踊るぞとポーズを決めたミクで終幕と一見まとまった様にも見えるけど、実は五者五様の方を向いたままの様にも思えて。
まあそれぞれの自分自身という在り方を否定はしないということなのだろうけど…

自分があまり乗れなかったのは男性が完全にモブだからかなぁ…
或いはジェンダーロールに対する理解はしてるつもりでも浅くて共感までは行ってないからかもしれない。

いずれにせよ、あまりスッキリとはしない作品に感じてしまったよ。
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