ふゆき

水深ゼロメートルからのふゆきのレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
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水泳授業の補習の代わりにプールの掃除を命じられた女子高校生2人+居合わせた水泳部の女子2人、4人による会話劇。
高校演劇が元だと知っているというのもあるだろうが、脚本が非常に舞台的。人物の出し入れが、袖から出る、袖に消えると行った感じで、もうちょっとわちゃわちゃしても良いのではと思うほどすっきりしている。
そのせいか、脚本的な上手さ、要素のアナロジーやアレゴリーの選択と配置(野球部の野郎どもが無自覚に撒き散らし、プールに堆積する砂とか)はなかなかのものなのに、どこか図式的な印象を受け、映画としての飛躍に乏しい印象。
それは、映画の画としての撮り方の上手さ、人物が描く場面場面の構図の完璧さが逆に印象的であるがゆえ、というのもあるかもしれない。
ほとんど引きの画なのに、ほんの数カ所足のアップなとが入っていてハッとさせられるのも良かった。
僕としては一番謎だったのは「一軍」のココロ。彼女は「女」に拘り、「男」と対置されたポジションを内面化させ、それを「最高の女(男にとって)」を目指すことで乗り越えようとしているが、それがセリフで語られるのでどこか自分に言い聞かせるような虚ろな価値観のように響く。そもそもメイクは何より自分のためにしている、ということも素直に口にする。
それはわかるのだが、彼女がそもそもなぜそこまで拗らせているのか、どうやら生理のときに無理やりプールに入らされたのも一因らしいが、阿波おどりに関する疑いのない価値観からすると、彼女の生きてきた環境がそうさせたのか、という気もしてくる。
そこが共感できないのは、僕が男でありJKの気苦労など預かり知らない、というのもあるだろうが、もしかして徳島という昔ながらの土地柄が大きく関係しているのかもしれない、などと想像した。
いや、ちょっとだけ出てくる野球部女子マネージャーの「選ばれたことがやりがい」という、やや搾取の薫りのする価値観からして、こういう図式は普遍的なのかもしれない。
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