会話劇としてとてもスリリングだし面白いのだけど、全体としてのバランスはちょっと悪いかなあと感じた。
原作は読んでいないが、たぶん相当量のボリュームがあるのだろう。
最終試験編とでも名付けたい前半部分で、一回事件の解決と決着を見せて、続く真相編で、それまでの事実をひっくり返し、すべての謎を明かしていく、という作りなんだと思う。
映画も基本的には、この流れに沿って撮られている。
注目すべきは「最終試験編」で、ここがとにかく面白い。
最終選考に残った六人は、企業側の「全員採用もあり得る」という言葉を信じ、協力して試験に挑むことを誓う。
試験までの期間、何度も打ち合わせを繰り返し、対策を練っていく。
各自が自分の強みを生かし、かつ全員が合格する道を模索するチームになっていく。
ここの熱さと爽快感。
そして企業から「一人しか採らない。合格者は話し合いで決めてください」と告げられてからのグループセッション。
自分が残りたい、でも人を落としたくもない、という葛藤。
からの、過去の悪事の披露からはじまる、壮絶な生き残り合戦。
自信満々なエリートで、高い意識系を装っていた六人が、不様に堕ちていく様は「何者」にも通じる面白さがある。
さらに、会話を通して、イメージや関係性が簡単に変わっていってしまうところにゾクゾクともさせられる。
15分ごとの「投票」という、審判を設けたのもまた上手い。
ころころと変わっていく状況のなかで、誰が生き残るのかという緊張感が生まれているし、会話劇をより盛り上げてもいる。
と、ここまではひたすら面白かった印象がある。
が、後半に「真相編」が描かれることで、前半の良さがぼやけてしまう。
別に後半の内容が良くなかったというわけでは決してない。
ただ、前半と後半のどちらに重きをおけばいいのかがわからなくなってしまうのだ。
また、二つの解決を描いているため、いろんな部分が駆け足になってしまっている感も否めなかった。
これは、前後編の二部作で観たかったなあ、と強く思った。
(まあ、興行的にたぶんそういう作りはできないんだろうけれど)