HAYATO

スオミの話をしようのHAYATOのレビュー・感想・評価

スオミの話をしよう(2024年製作の映画)
3.4
2024年169本目 
 唯一無二の思い出
三谷幸喜が『記憶にございません』以来5年ぶりに手掛けた映画作品
長澤まさみを主演に迎え、突然失踪した女性と彼女について語り出す5人の元夫たちを描いたミステリーコメディ
豪邸に暮らす著名な詩人・寒川の新妻・スオミが姿を消した。豪邸を訪れた刑事の草野はスオミの元夫で、すぐにでも捜査を開始すべきだと主張するが、寒川は「大ごとにしたくない」と、その提案を拒否する。やがて、スオミを知る男たちが次々と屋敷にやってくる。誰が一番スオミを愛していたのか、誰が一番スオミに愛されていたのか。安否をそっちのけでスオミについて熱く語り合う男たちだったが、浮かび上がる彼女のイメージは見た目も性格も異なっていて……。
三谷幸喜が脚本を手がけたNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で語り部を担当した長澤まさみが三谷映画初出演。スオミを知る5人の男たちは、元夫の刑事・草野役を西島秀俊、現夫の詩人・寒川役を坂東彌十郎、ユーチューバー・十勝役を松坂桃李、庭師・魚山役を遠藤憲一、警察官・宇賀神役を小林隆がそれぞれ担当した。
ストーリーは、5人の男性たちが豪邸に集まり、それぞれがスオミとの思い出を語る形で進行する。各キャラクターが回想するスオミの姿は、見た目も性格もまるで別人のように異なり、彼らがそれぞれ理想とする女性像をスオミに投影していたことが次第に明らかになる。また、スオミ自身が変幻自在にその姿を変えていたのは、彼女が周囲の期待に応え続けた結果としての「自己の喪失」を象徴しているようにも見え、彼女が最終的にはそれに疲れ果て、失踪という形で自分を取り戻そうとしているように思える。
元夫たちが互いに「男らしさ」を競い合い、虚勢を張り続ける様子は滑稽であり、スオミの失踪を知りつつも、自分たちのプライドを守ることを優先する彼らの行動は、現代社会における有害な男らしさを風刺している。
スオミ役を演じる長澤まさみさんは、物語の中心に位置するキャラクターを見事に演じ分け、その多面的な性格を絶妙に表現している。彼女が一人でさまざまなスオミ像を演じることで、スオミの実像がつかめなくなるところは、『コンフィデンスマンJP』のダー子に通じる部分がある。加えて、共演陣の豪華キャストもそれぞれの役柄にハマり、個性的な演技で作品を盛り上げている。特に、遠藤憲一さん演じる魚山のキャラクターがツボ。
幸運にも本作の製作に携わらせていただいたので、内容の善し悪しは関係なく、とても思い入れがある作品です。自分の名前がエンドロールに載っているのを見た時は言葉にならない感動でした。西島さんがゲラすぎてかわいかったな。
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