レインウォッチャー

COUNT ME IN 魂のリズムのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

COUNT ME IN 魂のリズム(2021年製作の映画)
4.0
復刊DrCU(ドラムシネマティックユニバース)⑪

母はバスドラ、父はスネア、初めの産声「1,2,3,4!」。ドラマーとはそういう生物なのでござい。

ドラムは円、つまり始まりにして終わり、これこそが楽器の完全体。そんな宇宙的深淵に少しでも魅入られた者であれば誰もが一度は憧れたキラ☆星のような名手たちが、音楽との出会いとプレイヤーとしての目醒め、プロとして一打に賭ける矜持を、ロック史に沿って語ってくれる。目ぇキラキラ、胸キュンキュン。

言うてわたしなんかは趣味に産毛が生えたくらいの、6"スプラッシュシンバルの縁にもかからない程の素人者ではあるけれど、それでも今作は
「それな」
と「言うよね~」
と「兄さん(姐さん)!」の連続である。

あとこれは完全に個人の贔屓目の話になってしまうけれど(今までは違ったとでも?)、有史以来一番かっこいいと信じるドラマーであるスチュワート・コープランドさんたそ様(THE POLICE)が出演してくれてたり、彼を他のドラマーたちが誉めたりしてる光景(※1)が観られるのですこぶる機嫌が良い。

コープランドに限らず、ドラマーたちが他の尊敬すべきドラマーの魅力を語る時間は多くとられていて、ずっとにやにやしてしまう。なんだろう、好きな人が好きなものや人のことを語ってるのを見るのって、なんでこんなに楽しんでしょうね。

ここで一度冷静になってケチをつけるとすれば、現代に作られる音楽ドキュメンタリーとしては流石におじ/おば接待すぎないかしら?ということだろうか。
この手のロック系企画あるあるではあるのであるけれど、90'sのニルヴァーナ/レッチリ出現くらいで歴史が途切れてしまって、それ以降30年の流れが語られないのだ。ロックは停滞したなんて嘘だ、むしろここからが面白いのに。

80'sのリズムマシンの台頭に触れたのであれば、長く続くヒップホップ(サンプリング)の影響だって避けて通るべきでないし、00's以降のインターネット普及によって加速度的に進んだ技術革新、YouTubeから発掘された新世代のスタードラマーたちも山ほどいる。(※2)
リンゴ、ワッツ、キース、ボンゾはレジェンド、それは真理だしこれからも永遠に変わらないけれど、そろそろ新約ロック/ドラム史が観たいところだ。

要するに、「時間たりねえよ!」ってことなのである。せめて2…いや3時間?いや、常時上映を続けるべきなんじゃあないだろうか。
だってスティーブン・パーキンスも言っていたでしょ、「ギターの音が消えても何とかなるが、バスドラムのペダルが壊れたら10万人の足がもつれちまう」って。ビートは途切れてはならないのだ。

------

※1:「彼のドラムはまるで魔法」、「あちこちで花火が上がるみたい」。うっふふふふ(限界)

※2:何名かの若手ドラマーもスピーカーとして登場はするのだけれど、彼らの世代に繋がる背景のストーリーの薄さが惜しい。