Cape

不死身ラヴァーズのCapeのレビュー・感想・評価

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)
3.9
面白いし感動するけど記憶に残らない映画と、鑑賞時は何だかよくわからないけど後々わかってきて記憶に残る映画があって、

“ショーシャンクの空に”とかは前者なんだけど、この映画はなんだか後者になりそうだ。

この映画の主題は松居大悟さんらしく、過去の恋愛とその記憶についてである。彼女は7歳の時に出会ってから、甲野じゅんを運命の人として疑わない。何度も彼に想いを伝えるものの、その度に彼は姿を消してしまう。この物語はSFではない。彼女の記憶のトリックであり、誰にでも共感できる思い出のお話。

劇全体から、松居監督がまだまだいろんな作品がしたくて、自分らしさを固めるというより実験を繰り返したいのだという意思が伝わる。

確かに過去の恋愛は都合の良いように美化され捏造される。辛い記憶は無かったかのように忘れ去られて、心の奥の奥の、深い位置の傷として残る。相手より恋愛に恋していたのだろう時期が僕にもあった。

彼の発する単純な言葉ひとつひとつがぽつりぽつりとなぜか涙腺を誘う。

線路を挟んで電車が通り過ぎて彼が見えなくなるシーン、あれの本当の記憶の回想シーンがすごくゾクゾクした。好きな人の恋愛を応援するガールはよく描かれるけれど、その心情描写をするのではなくて、実は記憶になくなるほど深い悲しみだったという、心情の遠回しな解釈の方がむしろズキンとするのを感じた。

カラオケのシーンも好きだ。案外本当にカラオケあるあるを映画で表現してるのをあまり見たことがないけれど、何だかあのカラオケは2回くらいしか経験したことのない僕でもわかるオールカラオケのあるあるで、ほっこり。

書いててわかったけれど、松居さんの映画は全体の構造というよりひとつ一つのシーンが濃密で完結してて、それでいて胃もたれしない清々しさがある。公開2日目、スクリーンには5人しかいなかったけれど、松居さんにはこれからも頑張って作り続けてほしい。

まだまだ書きたいことがあるけど、とりあえず見たその日に書きたかったからとりあえず。3ヶ月前とかから楽しみにしてたから、終わっちゃったなぁ、少し寂しい
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