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ミレニアム・マンボ 4Kレストア版のQIのレビュー・感想・評価

3.8
“普通に生きる”

小津フォロワー監督作品シリーズ🎦

監督:ホウ・シャオシェン
撮影:リー・ピンビン
主演:スー・チー(女史ではないw)

ホウ監督作品を観るのは『悲情城市』『珈琲時光』に続いて3作目

時代は新たなミレニアムをむかえ皆がどこか浮ついていた2001年

舞台は台北、新宿、そして夕張

物語はスー・チー演じる主人公のビッキーが10年前の自分のことを“彼女”と呼ぶモノローグで進みます

時系列が前後したり、同じことが繰り返し語られるのは、このお話が彼女の記憶の中の物語だから

異常に嫉妬深いヒモ男と別れたくても別れられず自堕落な生活を送るビッキー

ある日ヤクザのガオと出会い彼女の中で少しづつ何かが変わり始め…

リー・ピンビンが『花様年華』で見せた画作りはここでも健在

オープニングシーンで一気にその世界に引き込まれます

ここから小津的考察

ホウ監督は小津生誕100年を記念して『珈琲時光』というストレートなリスペクト作品を撮っていますが(これも撮影はリー・ピンビン)、本作でもその本質はしっかりと描かれていました

加えて感じたのは日本の映画文化へのリスペクト

ガオがビッキーにかける「普通に生きるべき」という言葉

普通の人々が行き交う新宿の街を彷徨うビッキーがつぶやく「そんな街に溶け込もうとした」という言葉

電車が行き交う様子を映すのはチョット小津っぽい?w

そして台北では決して見せることのなかった夕張でのビッキーの生き生きとした姿

台北ではエッジを効かせたリー・ピンビンのカメラも夕張では優しく彼女を見つめます

初めての(おそらく)雪と戯れ、小料理屋で夕張の人たちと楽しそうにおでんをつつく様子がとても愛おしい

小料理屋でおでんもこれまた小津?w

さらに「夕張キネマ街道」にズラリと並ぶ名画の看板の数々

石原裕次郎、寅さんに加えてアラン・ドロンからジャン・ギャバンまで

夕張では「夕張映画祭」をとても大切にしていて映画が“普通”の生活の一部になっている

そんな「夕張キネマ街道」の雪景色でこの物語は幕を閉じます

はたして2011年を生きるビッキーはどんな生活をしているのか?

10年前の自分を“彼女”と呼べるということはその時とは違うビッキーになっているはず

夕張の小料理屋でおでんを作りながら働き、夕張の人々と普通に生きる彼女の姿が目に浮かびました🍢😊

p.s.
健康上の理由で残念ながら映画監督から引退したホウ・シャオシェン

ただ彼の助監督を務めたシャオ・ヤーチュエンが監督、ホウ・シャオシェンがプロデュースに名を連ねた新作『OLD FOX』が間もなく公開予定

フォロワーシリーズに加わるのか?

是非この目で確かめたいと思います😉
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