つげぼーい

戦雲 いくさふむのつげぼーいのレビュー・感想・評価

戦雲 いくさふむ(2024年製作の映画)
4.0
映画としてのまとまりは無いように感じた。
ただ、まとまりの無さそれこそが、テーマの本質を表していると思う。

一口に「沖縄」「南西シフト」といえど、それぞれの島は固有の文化や歴史、背景を持ち合わせていて、そこに住む人々の生活も考えも異なる。
ある意味当然とも思えるそうした状況をひとまとめにして、国防という大義名分のもとに行政主導でミサイルや戦車の配備を行うことは、政治なのだろうか。

自衛隊員がハーリーに参加した際、「自衛隊と一括りにされていたのが、段々と名前を覚えてもらえて嬉しかった」と話していたが、まさに地域もそうなのだ。政治的に必要な区分が、必ずしも地方を尊重しているといえるのだろうか。

"水は低いところに必ず流れる"
"上流でやったことは必ず下流に影響する"
「悪は存在しない」のフレーズが頭をよぎった。住民への説明会の部分や自然の脅威など、本作と関連する点は少なくない。

権力に対して声をあげることは簡単なことではない。そうした声が、「条例の急な変更」や「当初の計画からの急旋回」や「県民投票を無視した着工」などによって無視されたとしても、声を上げ続ける意義はどこかにある。

それぞれの島の、沖縄の、ひいては日本の民主主義の根幹をなす議論と抵抗を、鼻で笑えるようになってしまったとき、いよいよ「戦雲」が空を覆うことになる。
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